子どもが「失敗できる」環境を作るには、大人の知恵や余裕も必要

寺町 遊びはとても大事です。例えば木登りすることで、空間を把握する能力が養われます。一方で、子どもの失敗を織り込んだ環境を作るには、大人の知恵や余裕も必要になってきます。例えば落ちたときに大けがをしないように、登る木の下に岩がない状態にしておいたり、コンクリートで固めず、ふわふわの腐葉土を敷いておいたりします。

 本の中では屋内外の遊びで工夫をしたり、子どもの主体性を引き出したりしている園を取材して紹介しています。この記事で紹介している写真は、横浜市内にある2つの園から提供いただきました。どちらも、先生方の工夫と子どもに対する温かい目線を感じます。

子どもたちが主体的に遊びやすいよう工夫された園庭。横浜市瀬谷にある鳩の森愛の詩保育園
子どもたちが主体的に遊びやすいよう工夫された園庭。横浜市瀬谷にある鳩の森愛の詩保育園

治部 お話を聞いていると「すくすく育つ」ためには、園だけでなく保護者の心構えも大事なように思います。

寺町 園との関係でいえば、日常生活で起こる小さいけがは許容するなど、親の側の度量の広さも必要になります。園と親の間で、許容範囲をあらかじめ共通認識にしておくことが大事ではないでしょうか。そして家の中では、優先順位付けが大切だと思います。例えば、1日の中で「この時間は子ども優先」と決めてほしい。そして、その時間は、家事より、子どもとの時間を大事にしてほしいと思います。

 自分の育児がどうもうまくいかないと思うときは、家事を完璧にこなそうとするあまり、効率的に子どもを動かそうとしていないか、立ち止まって考えてほしいです。子どもは大人が思うようには動かないものです。集中して遊んでいる子どもは、遊びの区切りがついたときに気持ちを切り替えることができます。

 子どものより良い育ちを考えるうえで、いわゆる「ワンオペ育児」は問題があると思います。育児を一人でやること自体が問題なのではなく、家事をちゃんとやりながら育児をするのは極めて困難だからです。例えば、片方の親が夕方から寝かしつけまで「ワンオペ育児」をせざるを得ない場合、その間、家事はやらなくていいと家族で合意できたらいい。夕方、育児対応していないほうの親が、夜遅く帰宅した後、家事をやるとか、家事サポートの方に来てもらうなど……、子ども担当は子ども優先、といった具合にできたら、いいのではないでしょうか。