英語や○○式教育などの「教育オプション」をアピールする高額園は要注意

寺町 要注意なのは「あえて認可外です」と言って、英語や○○式教育などの「教育オプション」をアピールする利用料が高額の園です。弁護士として相談を受ける案件の中に、こうした園が意外と多いのです。ウェブサイトに書いてあるカリキュラムが実際には行われていなかったり、事故や虐待が起きていたりするケースもありました。保育料が高いと安心してしまいがちですが、実態をよく見る必要があります。

治部 本のタイトルにある「すくすく育つ」というフレーズが目を引きます。よい園では子どもが「すくすく育つ」ということでしょうか。

寺町 はい、その通りです。本では、子どもの興味関心を尊重する保育をしている幼稚園や保育園を「よい園」として、紹介しています。自由に遊び、試行錯誤する機会を得られること、保育者がその重要性を理解しているとき「すくすく育つ」環境ができると思います。試行錯誤を経て学ぶことは、とてもたくさんあります。

 例えば、箱を作るという作業を考えてみましょう。のりしろがないと、くっつけることができません。また、蓋を付けたかったら本体より少し大きくしないと、うまく被せることができません。こういうことは、自分でやって失敗すれば、子どもは自然に学んでいきます。失敗を経験することで、どうしたら失敗しないか自分で考え、工夫する。これが試行錯誤の過程で重要なことです。

子どもが好きな道具を使って自由に遊べるように、分類して整理整頓された棚。横浜市の川和保育園
子どもが好きな道具を使って自由に遊べるように、分類して整理整頓された棚。横浜市の川和保育園

治部 失敗を経験できる環境が「すくすく育つ」園ということですね。

寺町 そうです。失敗しながら自分でどうしたらいいか探っていく「試行錯誤」の過程がとても大事です。対照的なのが「幼児教育」と聞いて想起するような「お教室」や「ペーパー学習」です。そうした「お教室」も見学してみたのですが「学ぶ機会」はむしろ少ないのではないかと思いました。親がそばで見ている「お教室」では、子どもが失敗しそうになると、つい手を出したり口を出したりしてしまいがちです。実は「教え込まれた」知識は、小学校低学年で追いつかれてしまうことが多いです。むしろ失敗してもめげないで再度チャレンジする姿勢を身に付けるほうが重要です。

 小学校では、ひらがなや漢字、計算のプリントやドリルをやります。一度間違えた問題は、やり直しをして、二度目にできたら青丸をもらったりします。この過程で子どもは間違えた箇所を理解したり、自分の間違えるときの癖を認識することができます。こうした失敗の過程を繰り返し、学習内容を身に付けていく子は、いわゆる早期教育を受けた子にすぐに追いついていきます。