グローバルに考え、ローカルで行動する「グローカル教育」

 これからの時代を生きるためには、自己から他者へ、社会へと関心を広げていくことが必要だ。中村では、Global(世界・地球規模)に考え、Local(身の回り)で地に足をつけて活動できる教育を実践している。

 まず中1では、社会科の深川めぐりを通じて、地元深川の歴史と文化を学ぶ。その後、田植え体験や、茶道・華道体験を通して日本文化に触れ、修学旅行で京都や奈良、さらには広島や沖縄を訪ねて日本への理解を深めていく。自らのアイデンティティを確立していきながら、グローバルな視野を身につけていくのが中村の国際教育です」と江藤先生は語る。

 具体的が試みとして中2では、中1で体験した深川めぐりをもとに、外国人に地元深川を案内する「国内Summer School」を実施している。各グループに1人のネイティブ教員がつき、設定した歴史・文化・人物などグループごとに設定したテーマに沿って外国人を案内。最終日には英語でプレゼンテーションも行うプログラムで、「読む」「書く」「聴く」「話す」の4技能はもちろん、コミュニケーション力やプレゼンテーション力も身につけることができる。

 さらに中2、中3の希望者を対象とした「海外Summer School」もある、8月の11日間、オーストラリア・ブリスベンやアメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問するプログラムで、現地学生の家にホームステイしながら生きた英語を体得。この経験をきっかけに、国際科(後述)に進学する生徒も多いという。

 また同校では、多様な価値観を認められるダイバーシティの推進にも取り組んでいる。「入試方法にも、そうした考えが現れています。一般入試、特待生入試、適性検査型入試といった筆記試験に加え、芸術やスポーツなど多方面の努力を評価する『ポテンシャル入試』、英語力を測る『グローバル入試』等を実施。さまざまな価値観を持つ生徒が集まることで、お互いに刺激し合い、成長していく。そんな学びの場でありたいと思っています」(江藤先生)

生きた英語力を身につけ、世界に羽ばたく

 中学の英語教育を通して、英語を好きになった生徒の進路としては「国際科」がある。高い英語力を磨くと共に、全員が英語圏の高校へ1年間留学。1校1名の環境で学び、生きた英語力と異文化体験を通して広い視野を身につけていく。

 もう一つの「普通科」は、大学進学を目標に、質の高い授業と生徒一人ひとりの志望に合わせた学習方法で、確かな学力を身につけていくコース。放課後の課外講座や夏・冬期講習など、授業外のサポートや、AO・推薦に対応した小論文・面接指導など、充実の体制で生徒を合格へ導いている。

 ところで英語=国際科と思われがちだが、普通科でも高レベルの英語教育が行われ、生きた英語を身につけることができる。国際科の生徒と触れ合うことで海外への興味が育まれるとともに、高1生対象のオーストラリア短期留学、高1・2年生対象のオーストラリア語学研修もあり、世界に目を向ける生徒も少なくない。

 その表れの一つが、「トビタテ!留学JAPAN」への挑戦だ。これは文部科学省が2014年からスタートさせた海外留学支援制度で、2020年までの7年間で約1万人の高校生、大学生を派遣留学生として送り出す計画。目的意識と英語のプレゼン力等で選考されるこのプロジェクトに、同校は初年度から連続して日本代表を輩出しており、4年連続は都内の私立校でも数校のみ。加えて過去最多応募となった第5期生(2019年度)も2名合格、5年連続の快挙を達成した。 「かけがえのない経験をするチャンスを活かし、自らの課題に取り組むべく世界に飛び立っていった生徒たちの存在が、周りにいい影響を与えてくれています」(江藤先生)

 なお、同校では2019年度から普通科の募集を再開。異なるバックグラウンドを持つ生徒が入学してくることで、さらなる活性化を期待している。

 最後に江藤先生は、以下のように話してくれた。

「少し前になりますが、卒業式の答辞で、『中村は私たちにとって止まり木のような存在だった』と言ってくれたことが今も忘れられません。将来世界に大きく羽ばたくために、また社会に飛び立つ準備の場として、これからも本校は生徒一人ひとりと向き合い、人間として大切なものを育み続けたい。同時に、子どもたちがいつでも帰ってこられる場所でありたいと思っています」

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