「子どもの居どころ」づくり、3つのポイント

 家における子どもの居どころ、というと子ども部屋を思い浮かべます。けれど実際に子どもが過ごす場所は子ども部屋だけではありません。その前提で、「生きる力を育むための子どもの居どころづくり」があり、その実現には3つのポイントがある、と河崎所長は話します。

 ひとつめは「みんなの居どころ」。家族みんなが集まるリビングで、子どもが座る場所や勉強する場所などです。特にベビー期、キッズ期には家族一緒に過ごせる居どころが重要です。例えば、床を一段低くした「ピットリビング」は、親子で一緒におもちゃで遊んだり、本を読んだりくつろげるスペース。段差を利用して座ったり、背もたれにしたりもできます。ピットリビングには必ずしもセンターテーブルを置く必要がなく、カーペットも柔らかいものがオススメです。

積水ハウスが提案する、床を一段低くしたリビング空間の「ピットリビング」。人にはくぼみの部分に自然と集まるという習性があることが分かっています。その点を活かしつつ、段差を机や椅子として使ったり、床に寝転んだり、子どもが自由な発想で空間を使うことができます
積水ハウスが提案する、床を一段低くしたリビング空間の「ピットリビング」。人にはくぼみの部分に自然と集まるという習性があることが分かっています。その点を活かしつつ、段差を机や椅子として使ったり、床に寝転んだり、子どもが自由な発想で空間を使うことができます

 また、学ぶ場所については、水野さんとの共同研究「抗疲労効果のある勉強環境の研究」で生まれた勉強スペースのデザインを紹介。短時間の勉強は立ってできるカウンターがあると疲れず意欲的に取り組めるという研究結果から生まれた「スタンディングデスク」。長時間の勉強ではインテリアが木質だと疲れにくいという研究結果から生まれた「木質インテリアの子ども部屋」を紹介。これらの研究で「スタンディングデスク」と「木質インテリアの子ども部屋」は2019年にキッズデザイン賞を受賞しています。

 2つ目のポイントは「自分だけの居どころ」の提供です。個室という意味ではなく、ロフトや階段の下のちょっとしたスペースや、壁にベンチを作るだけでも、隠れ家のような居どころが生まれます。小さなスペースは、子どもの探究心や好奇心を刺激し、創造力をフルに活用して遊ぶことができます。

隠れ家を作った子ども部屋
隠れ家を作った子ども部屋

 最後にあげられたポイントは、「眠るところ」についてのアドバイスです。ここで特に気を配りたいのが2歳までのベビー期。大人用のベッドで一緒に寝ていたことで壁とのすき間に落ちてしまう事故が社会的な問題になっていることをあげ、寝室はなるべく広くとった上で、大人用のベッドで寝るのではなくベビーベットを用意し、安全に就寝できる環境を整えることが大事だと言います。

ベビーベッドを大人用のベッドに対してL字方向に設置して安全に配慮した「かぞく寝室」
ベビーベッドを大人用のベッドに対してL字方向に設置して安全に配慮した「かぞく寝室」

 子どもが一人で寝られるくらいに成長したら、大人の寝室と緩やかに仕切られた子ども部屋を設けるなど、成長を見守り応援できることを想定して寝室を用意することを提案しています。他にも、可動式の間仕切収納家具を活用して空間を自由にレイアウトする子どもの成長に合わせた居どころづくりについてのアドバイスをしてくれました。

経年変化を考えた居どころ提案の例<br> ベビー期は寝室の幅を4m以上と広くとることでベビーベッドは安全を考えた配置が可能になり、子ども部屋スペースはオープンな空間に。子どもが二人になり、上の子がキッズ期になったら子ども部屋をゆるやかにゾーニングし、子ども一人ひとりのスペースに
経年変化を考えた居どころ提案の例
ベビー期は寝室の幅を4m以上と広くとることでベビーベッドは安全を考えた配置が可能になり、子ども部屋スペースはオープンな空間に。子どもが二人になり、上の子がキッズ期になったら子ども部屋をゆるやかにゾーニングし、子ども一人ひとりのスペースに

 最後に河崎所長は、「子どもは育った家を忘れない。一緒に過ごした時間を忘れない」というメッセージとともに、子どもと過ごすおうち時間をもっと楽しみましょう、と締め括りました。

「住めば住むほど幸せ住まい」のヒントが詰まった「積水ハウス住生活研究所」のWebサイトはこちら

■4月24日(土)に配信したセミナーは以下から動画でご覧いただけます。なお、アンケートは終了しております。

取材・文:塩野里美