コミュニケーション能力を育むには家族と過ごす時間がカギ

 次に、水野さんは先ほどの「ヨドネル大規模調査」で行われた注意配分力テストの結果から、疲労が続くと2つのことを同時に行うのが難しくなってしまうと解説。この能力は、人の話を聞きながらメモをとる、相手と話しながら次に話すことを考えるなどのシーンに欠かせないもので、大人になっても重要な「コミュニケーション能力」のひとつにつながります。

 注意配分力を養うためには、疲労を蓄積させないことのほかに、親ができることもあると水野さんは指摘します。同調査のアンケートとテストの結果から、家族と過ごす時間が多い子どもや、頑張ったことを親に褒められている子どもほど、注意配分力が高いということが分かりました。家族での会話を通して、努力を褒めてあげることが子どものコミュニケーション能力や創造力を高めるために役立ちます。

 また、最近の他地域での調査結果から、家族と過ごす時間が多い子どもほどコロナウイルスに対する恐怖心も少ない傾向にあると分かったそうです。家族で話す時間を持ち、生活上の不安を共有し解決へ向けて家族でアイデアを出し合うコミュニケーションが、子どものストレス軽減につながるのではないかと水野さんは話します。

 最後に、水野さんは「ステイホームで家族と向き合う時間が増えた人も多いはず。家族時間と睡眠時間をしっかりとり、おうち時間をどのように過ごすかをぜひ考えてほしい」と呼びかけました。

生きる力を育むための「子どもと過ごすおうち時間」のヒント

 オンラインセミナーの後半は、積水ハウス住生活研究所の河崎由美子所長の講演で「子どもの生きる力を育む家」について学びました。

<b>河崎由美子所長</b><br> 積水ハウス執行役員住生活研究所長。1987年積水ハウス入社。キッズデザイン、ペット共生、収納、食空間、ユニバーサルデザインなど、暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。キッズデザイン協議会理事
河崎由美子所長
積水ハウス執行役員住生活研究所長。1987年積水ハウス入社。キッズデザイン、ペット共生、収納、食空間、ユニバーサルデザインなど、暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。キッズデザイン協議会理事

 家づくりを考えた時に、積水ハウスが提案するのは「子育ちの視点」に重きを置くこと。親視点からでは、「子育てしやすい家」という考え方になってしまいますが、より大切にしたいのは、体験を通じて子ども自身が“どう育っていくか”だと、河崎所長は言います。そのために住まいはどうあるべきかについて詳しく解説しました。

 発達段階を乳児期から青年期までに分けて発達過程を考えた時、子どもの成長には感性、身体、知性、社会性の4つの発達テーマと、そのテーマに重要な影響を与える時期があります。例えば、乳児期から幼児期前期では、感性の「五感を育てる」、幼児期後期~児童期後期では、知性の「創造力・思考力を身につける」など。積水ハウスではこの発達テーマを「居どころづくり」の指標にしているそうです。

 積水ハウスが実施した「自宅での子どもの学習場所調査」によると、小学生では子ども部屋よりもリビングで学習する割合が高く、中学生になると子ども部屋で学習する方がリビングで学習する割合を上回ります。しかし、意外なことに、高校生になってもリビングで学習するが47.4%と、非常に高い結果に。子ども部屋に限定せず、家庭内のどこででも学習できるようにしてあげることが、学習意欲を維持するためにも大切だと河崎所長は言います。

出典:積水ハウス調べ
出典:積水ハウス調べ