大ベストセラーで映画「ビリギャル」の原作にもなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)や『才能の正体』(幻冬舎)など多数の著書を持ち、坪田塾塾長として数多くの生徒の意欲と学力を上げ続けている坪田信貴さんに、子どもの自立心を高める方法や、親のわが子に対する正しい関わり方などについて聞きました。前後編2回に分けてお届けします。

(日経DUAL特選シリーズ/2020年6月20日収録記事を再掲載します)

<坪田信貴さんインタビュー>
【前編】『ビリギャル』坪田先生 子の自立心育む声かけ
【後編】子どもの才能伸ばすには「メタ認知力」がカギ ←今回はココ

「押してダメならもっと強く押す」親が犯しがちな過ち

 親の役割というのは、実はたった一つだけ、と坪田塾塾長の坪田信貴さんは言います。

 「親の役割で一番大切なことは、その子がその子らしくいられることをサポートすること。つまり、自己肯定感や自尊感情を育んであげることです。生まれてから10年、20年と一緒に過ごしていくなかで、この感情を必ず育ててあげてほしいと思います。子どもの能力は、自分らしさが出ることで伸びていきますから、自分を信じることができる力は、何においても重要です」

 自己肯定感は、子どもはもちろんのこと、親自身にも欠かせないと言います。

 「親が子どもに向かってネガティブなことを言い続けていると、自分自身に言っているのと同じで、親自身も自尊感情が損なわれていきます。そうなったら、家庭崩壊につながりますよね。

 親も子も自己肯定感を持てるように考えていくことが、長い目で考えて子ども自身の才能を伸ばしていくことにつながると思います」

 学力が伸び悩んでいる時など、「塾を週3回から週4~5回に増やせそうか」「ドリルをもう1冊買ってこようか」などと悩む場面もあることでしょう。でも、そうしたアプローチは根本的な解決ではないと、坪田さんは指摘します。

 「『押してダメなら引いてみろ』という言葉がありますが、子どもの教育では、『押してダメならもっと強く押す』ということを親はしてしまいがちです。

 例えば、親が帰宅した際、留守番をしていた子どもが宿題をせずに、ずっと遊んでばかりいたとします。そんな時、『どうして宿題をやっていないの!』と語気を荒らげて叱り飛ばしたりしていないでしょうか。これこそが『押してダメなら、もっと強く押す』という失敗例なんです」