新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの会社員が在宅勤務をするようになった。子どもの学校も臨時休校で、家族全員が24時間顔を突き合わせて暮らしていれば、これまでとは違ったストレスが出てくることも。夫婦関係の悪化による「コロナ離婚」という言葉まで聞かれるようになった。

夫婦の問題に長年取り組んできた石蔵文信さんは、自身のクリニックに「男性更年期外来」を開設して日々、相談に乗る。ここではある共働き夫婦「笠井家(仮名)」のママとパパをモデルに、石蔵さんに「コロナ離婚」を防ぐための方策を聞いた。

リモート勤務の夫が娘に声を荒げる

【笠井家の人々】
笠井家のパパ(夫)…IT関連企業勤務。42歳。3月からリモートワーク。
笠井家のママ(妻)…フリーランス編集者。40歳。普段から基本的に在宅勤務をしている。
長女…小学2年(7歳・小2)。臨時休校中。
二女…3歳。臨時休園中。
笠井家の夫婦間バトル【1】
新型コロナの感染拡大に伴い、突然リモート勤務になったパパ。当初はリビングで仕事をしていたが、1日の大半がリモート会議のため、子どもたちが騒ぐと「うるさい、あっちへ行け!」などと声を荒らげるようになった。ママは「急に学校に行けなくなった子どもの気持ちも、少しは考えて!」と頭に血が上った。

 こうした現状について、「ステイホーム中、家族が一緒に過ごす時間が増えた今こそ、夫婦が子育ての根本に立ち戻ることが大事です」と、石蔵さんは語る。

 「人生は仕事のためにあるのではなく、家族が生きるために仕事をしているのです。大企業に勤める男性ほど、仕事中心の考え方に陥りがちですが、今回のような未曽有の事態にこそ、家族関係を大事にしないと、定年後に熟年離婚をする可能性が高まるでしょう

原因は、外出自粛で「臭いものにふたができなくなった」ため

 石蔵さんの元には、夫がコロナ感染拡大を機に家にいるようになり、妻が体調を崩したという相談が寄せられている。共働きであっても、妻より夫が長時間労働だった場合、母子だけで過ごしていた時間に夫が入ってくる形になる。しかし夫によっては、家事や育児を妻任せにして自分の仕事時間を確保。妻はその分、睡眠を削って仕事にあてているケースも少なくない。

 石蔵さんは「コロナ離婚が言われていますが、定年後まで先送りにしていた熟年離婚の問題が前倒しで顕在化しているだけ」と分析する。かつては夫が家族に関心を示さなくても、妻が経済的な理由やあきらめの気持ちから、離婚に至らないということも多かった。しかし今は、人生100年時代となり、70代を過ぎて離婚する夫婦も増えているという。

 「男女ともに寿命が延びたことで、『夫はこれからもまだまだ元気そうだ』と妻が考えるようになり、そんなに長きにわたり一緒にいるなんてまっぴら!と、離婚に踏み出すようになったのです。今回のコロナ離婚は、まさにこの状況と似ています。今後もリモートワークが主流になるかもしれない、という先行きを見通し、定年後の夫婦生活をリアルに想像したところ、そんな生活は耐えられないと、早くに別れを決断するのではないでしょうか」

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