普段の家事の積み重ねが日々の幸せを作っている

 プロジェクトの内容は、普段洗濯をしている人に『感謝の言葉を添えて、一輪の花があしらわれたオリジナルデザインの超コンパクト洗剤を贈る』というもの。「このプロジェクトを通して伝えたかったのは、普段、日の当たることの少ない家事の積み重ねが日々の幸せを作っていること。そして、そんな家事の一つである洗濯を頑張ってくれている人にリスペクトを贈ることです。だからこそ、記念日や『父の日』『母の日』といった行事の日に贈る豪華なプレゼントではなく、いつも使う洗剤にささやかなありがとうの気持ちを託して贈ることを提案しました」と廣岡さん。

 廣岡さんたちは、このプロジェクトを実際に数組の夫婦に実践してもらい、夫婦の感情にどのような変化がみられるか調査する実験を行いました。プロジェクトの意図や内容は被験者たちには伏せてあります。

 実験の際には、洗濯をしてもらっている人が、普段洗濯をしているパートナーに似合う花を選ぶ、という試みも行われました。廣岡さんによると、花にはこんな意図を託したのだそうです。「『いつも洗濯をしてくれありがとう』という言葉の根底には、家事自体への感謝以上に、その人の存在自体への『ありがとう』がこもるのではないかと思います。花を選ぶことで、大切なその人の姿を思い浮かべるきっかけになればと思いました」。

サンキューボトルプロジェクトのために特別にデザインしたボトル。ボトルの表面には「感謝」の花言葉を持つ6種の花をあしらい、裏面には感謝の気持ちを込めたメッセージを載せている。花名は左からカーネーション、ダリア、トルコギキョウ、ガーベラ、レースフラワー、バラ
サンキューボトルプロジェクトのために特別にデザインしたボトル。ボトルの表面には「感謝」の花言葉を持つ6種の花をあしらい、裏面には感謝の気持ちを込めたメッセージを載せている。花名は左からカーネーション、ダリア、トルコギキョウ、ガーベラ、レースフラワー、バラ

 その様子を撮影した動画の一つがこちらです。

 動画に登場する向井夫妻は共働きで、洗濯は8割がた妻の担当。でも、サンキューボトルをきっかけに、夫の感謝の気持ちが分かったことで、妻は「こんなに感謝していてくれるならやってくれるのではないかな」と、今後は夫に洗濯を頼んでみようか、と考えを変えます。お互いの考えをしっかりと確認でき、家族の幸せを改めて認識した様子の向井夫妻です。

 「向井夫妻の場合もご主人が花を選ぶときの表情がとても印象的だったんです」と廣岡さん。「それまでは比較的固い表情と言葉だったのが、花を選び始めると自然とやわらかい笑顔になって、パートナーを思う言葉が出てくるんです。相手のために花を選ぶときって、内面まで考えますよね。そのときに何とも言えない幸せそうな表情になり、それを見ている奥様の表情も一気に幸せそうな表情に変わっていきました」