子どもを持つ家庭には、聞きなれた言葉である「食育」。力を入れたいけれども、忙しくて取り組めていない、自分が子どものころ受けてきたような食にまつわる経験をさせてあげられない、そんな罪悪感や責任の意識を持ってしまうDUAL読者もいるはず。「第3次食育推進基本計画」の作成に携わった食のエキスパート、食STORY代表の米倉れい子さん、クックパッドのブランディング本部長の小竹貴子さんと食育について考えていきます。今回は上編です。

知っていましたか、食育に法律があるのを

日経DUAL(以下、――) 食育という言葉、最近よく聞きますが、一体何なのでしょうか? DUAL読者は子どもの食に関心が高い人が多いように感じますが、一方で忙しくて思ったように取り組めないというジレンマを抱えていると思います。

小竹 私も子どもを抱える働く親として感じているジレンマを感じています。さらに、食育について自分の知識が足りないんじゃないかとか、もっときちんと食育に時間を費やすべきじゃないかという不安もあります。

米倉 食育って、子どもたちのためだけでなく、「人が生きる力を育んでいくときに、食を通じてどのように関われるのか」ということなのではないかと思っています。それが平成17年に法律になった食育基本法の前文でも示されています。また、食育基本法の制定をきっかけに、食育に取り組みましょうという計画が地域ごとに具体的に作られるようになりました。制定3年後には、47都道府県で100%、つまりすべての都道府県で食育の計画が作られ、市町村レベルでも現在8割近くの自治体が計画を作成し、食育に取り組んでいます。

―― 何をやるかは自治体に任されているんですか?

米倉 ベースは食育基本法を踏まえていると思いますが、県や市町村等の方針に合わせてそれぞれアレンジされています。県などによって保健部門や農業部門、教育部門など担当部署が異なるため、食育の特徴も地域によってはきっと変わってきますね。

 また、地域の食育ボランティアさんだけでなく、学校給食や子どもの食育をコーディネーターできる栄養教諭も5428人(平成27年度)まで増えてきています。ですから、お子さんを中心とした食育の環境はどんどん整ってきていると言えますね。ただ、保護者の方々にとっては、どんな食育が進められているかという具体的な取り組みは、学校よりも保育園のほうが知る機会は多いかもしれません。

小竹貴子さん(左)と米倉れい子さん
小竹貴子さん(左)と米倉れい子さん

食育を身近に感じる保育園時代

米倉 結婚前は独り暮らしなどで自分の食生活にそこまで気を配っていなかったのに、妊娠をきっかけに食育に興味を持ったという人も実は多いことが食育に関する意識調査の結果で分かっています。その後、子どもを保育園に通わせ始めるようになって、給食室からだし汁の匂いがしたり、子どもが給食の話を家でするようになったりして、大人にとっても食育を意識する機会が増えていくようです。小さなお子さんがいると、芋掘りや田植えに一緒に行くこともあるのではないでしょうか。