食事のバランスは1日を俯瞰、足りなければ後でプラスでOK

―― お子さんたちも、お母さんがイライラごはんを作るよりもたまにはこうして笑顔で座って一緒に食べられるのがうれしかったりしますよね。

米倉 正解はないですよね。調理の失敗さえも「あ~やっちゃったね(笑)ごめんね」というやりとりで、お子さんたちにとってはお母さんとの笑いがあふれる時間で楽しかったりするかもしれませんよ。

小竹 2人目になって私も相当楽をするようになりましたが、一方で健康に育てないといけないという思いも強くあります。バランスを考えてごはんを作ったりしますが、同僚と話すとそういうことを知らない人もいて、知らないことへの不安というのもあるんじゃないかと思いました。料理や調理の技術や、野菜の見分け方などもそうですよね。

 そうなると働くお母さんやお父さんは、食育に関するどういうスキルを持っていると、楽しく過ごせると思いますか?

米倉 健康という点で考えると、何かに偏ることなく、バランスよく食べるということが結果的に栄養素を満遍なく取ることにつながります。国では「主食、主菜、副菜をそろえましょう」という話をよくしていますよね。ご飯、肉・魚・卵・大豆製品でつくったメーン料理と、野菜などを中心とした付け合わせをつける定食型がそのイメージです。面倒な時はそれらをすべてワンプレートにのせてしまってもいいと思いますよ。

小竹 どのくらいの期間で、栄養を意識したらいいのでしょうか。

米倉 そうですね、お母さん方にしてみると1日という単位が分かりやすいかもしれません。例えば、朝食や昼食がパンだけ、ドーナツだけになっちゃったという時なら、じゃあ夜は頑張ろうと少し手を加えるといいですよね。また、お子さんがその前に何を食べたかを聞きながら、前は肉料理だったから次は魚料理で…というように食材をかぶらないよう意識するといいのではないでしょうか。

 子どもに「ご飯はいいからおかずだけでも食べなさい」と言うことがあると思うのですが、やはり栄養としては主食も必要なんです。1日の中である程度気を付ける程度でいいかなと思います。

料理で解決できる社会問題に取り組む

小竹 先日、クックパッド大学※1で「食育」をテーマに取り上げ、米倉先生にお話を聞いたところ、食育が身近なもので、社会にも意味があるものだと俯瞰することができました。食育って子どもだけでなく、大人になってからももっと知ったほうがいいのかなと思えるんですね。

「クックパッド大学」で話す小竹さん
「クックパッド大学」で話す小竹さん

米倉 初めて参加させていただきましたが、参加者の方からあんなに広くて深い「食育」の話が短時間に出てきたこと、そして出てきた意見がとても多様だったことに驚きました。出てきた意見の多様性も感じました。

小竹 そうですね。クックパッド大学はこれまで「農業」や「孤食」などのテーマに取り組んできましたが、「食育」はあまり人気がなかったんです。でも、その中でも「来たい」といってくれた人からはやはりそれだけ強い課題意識を感じました。

 例えば「食べる」ということについても「健康に生活したい」という話から生産者に関する感謝や食品ロスへの対応などにも話が広がりましたよね。食育というと、どうしても子どもへの教育という点が注目されがちですが、実はもっと広がりがあるんですよね。

 最後に行うワークショップでは、参加者からは「食育は誰でも楽しめるエンターテインメントである」「食育は料理にとどまらない、人生に役立つスキルとして非常に重要だ」という意見もあがっていました。私自身も固定概念を取り払い、改めて食育を考えるきっかけをもらったように思います。

※1 クックパッド社内外のメンバーが集まり料理にまつわる社会課題について深く知り考える講座

「クックパッド大学」で話し合う参加者たち
「クックパッド大学」で話し合う参加者たち

 ――後編に続く

(取材・文/岩辺みどり)