「子ども」「子育て」を題材にした作品を多数発表、日経DUAL上でも、2017年6月から18回に渡り、共働き子育て中の女性たちを描いた連載小説「さしすせその女たち」を執筆し、多くの読者の心をつかんだ小説家の梛月美智子さん。2人の男の子を育てるワーキングマザーでもある椰月さんにインタビュー。日々、共働き子育てをする中で感じていること、DUAL読者に伝えたいことなどを語っていただきました。【上編】【下編】に分けてお届けします。

日経DUAL編集部(以下、――) 連載小説を執筆いただいていた頃にはお子さん二人とも小学生でしたが、上のお子さんは今年、中学生になったそうですね。中学受験をされたとか。

椰月美智子さん(以下、敬称略) はい。私立中学受験をしました。結果からお伝えすると、志望する2校に絞って挑んだ受験の結果は「不合格」。結果が分かった直後は私もガックリして力が入らない状態でしたが、ひと月半ほどたった今は、「あの子の成長のためにも、やってみて本当によかった」と思えるようになりました。長男も「話していいよ」と言ってくれました。

「不合格が分かった直後はがっくり落ち込みましたが、1カ月が経った今、ようやく『やってみて本当によかった』と思えるようになりました」と話す椰月さん。4月中旬、小田原城址公園にて
「不合格が分かった直後はがっくり落ち込みましたが、1カ月が経った今、ようやく『やってみて本当によかった』と思えるようになりました」と話す椰月さん。4月中旬、小田原城址公園にて

―― 受験は早い段階から予定していたのでしょうか?

椰月 いえ、まったく。私は生まれ育った小田原で今も生活しているのですが、私も夫も中学受験は経験しておらず、都心から離れた小田原では中学受験は少数派。息子が通っていた小学校でも、中学受験をしたのは3人だけでした。

 それでも受けようと思ったのは、最終的に本人が希望したことと、周りの先生方から「私立向きの子ですね」と言われることが多かったから。長男は環境に左右されやすい敏感な性格で、人とは少し違う選択をすることに喜びを感じるタイプ。最終的に、5年生の10月頃に学校見学に行って、本人が「ここは自分に合いそう。ここがいい」と感じたところを受けました。

 ちなみに次男はどこに行っても変わらないというか、環境に左右されないタイプで、むしろ地元の公立が合っていると思うので、中学受験は考えていません。

 初めて受験を意識したきっかけというのも、3年生から通い始めた塾がたまたま進学系の塾だったから。そもそも、塾に通うようになった理由は、「なんとか学校の授業に追いつかせたい」という気持ちからだったので、まさか受験することになるなんて、当時は思っていませんでした。