TOEIC850点をクリアする女性たち。子育て中のママは人材の宝庫だった

 一方、杉山さんによれば、日本において在宅秘書が導入された背景は、少し異なるそうです。

 「男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年のことですが、四年制大学を卒業して、男性と肩を並べて働く女性が増えた結果として、秘書という職業を志望する女性が減り、有能な人材が枯渇していたことが一つの理由です。さらに総合職で働いていた女性ほど、結婚・出産を経ると、元のポジションに戻れない。お子さん1人のときはなんとか頑張れても、2人目が生まれると、どうにも手が回らず仕事を手放す優秀な女性をたくさん見てきました。この二つの問題を結びつけるのが在宅秘書というキーワードだったと思います」

<b>杉山優子</b>さん</br> PwC Japan合同会社 総務部 ディレクター</br> PwC Japanグループ各法人の本社機能の移転・統合、オフィス環境の改善・向上といった数多くのプロジェクトに関わり、成功を収める。日経ニューオフィス賞をはじめオフィス関連の受賞多数。現状に満足する事なく常に「新しい働き方」を提唱し続け、時代にマッチしたリモートワーク推進のため在宅秘書導入にも取り組んでいる
杉山優子さん
PwC Japan合同会社 総務部 ディレクター
PwC Japanグループ各法人の本社機能の移転・統合、オフィス環境の改善・向上といった数多くのプロジェクトに関わり、成功を収める。日経ニューオフィス賞をはじめオフィス関連の受賞多数。現状に満足する事なく常に「新しい働き方」を提唱し続け、時代にマッチしたリモートワーク推進のため在宅秘書導入にも取り組んでいる

 蓋を開けると「想定以上の応募があったことに驚いた」と言います。応募資格は社会人経験10年以上、中級レベル以上のPCスキル、メールや電話対応が可能な英語力としてTOEIC850点以上と、かなり高いレベルを求められますが、応募者は絶えません。現在は、東京・名古屋・大阪・福岡で29名の在宅秘書が働いています。「語学に堪能で、グローバルなプロジェクトをいくつも成功させてきたような人が数多く在籍しています。求めていた人たちはここにいたのか、という気持ちでした」