早期教育で計算力を身に付けるだけでは、算数が好きな子に育てることはできない。複数の習い事は子どものエネルギーも時間も分散させるだけなど、「宮本算数教室」の宮本先生の講演から、前回は「低学年の子どもが算数ですべきでない勉強法」をお伝えしました。今回は算数で得られる、賢くなるために必要な要素についてお届けします。
 なおこの記事の内容は、2018年3月に行った講演会「今年度の算数入試では何が問われたか」を、2017年12月には「お子さんが低学年の間にやるべきこととやるべきでないこと」(いずれも「わが子が伸びる 親の 技 スキル 研究会」主催)という2つの講演からまとめたものです。

■宮本哲也さん(上) 算数ができる子の受験 模試の裏側
■宮本哲也さん(中) 低学年の算数 没頭力と考える力が学力アップの決め手
■宮本哲也さん(下) 算数で得られる 賢くなるために必要な要素 ←今回はココ

なぜ、何のために学ぶのか

 私たちはなぜ、何のために学ぶのでしょうか。宮本先生は「幸せになるために学ぶのです」と明言します。では、幸せな生き方とはどんな生き方でしょうか。いい中学、いい大学、いい会社に入って、いい給料をもらうことでしょうか?

 「幸せな生き方とは自分らしく生きる生き方です。自分らしく生きるというのはどういう生き方か。その答えを外に求めてはいけません。親や先生に聞けば、それらしい答えを言うかもしれません。でもそれは、99%合ってはいません」(宮本先生)。賢くならないと自分の生き方は見つけらない。そして賢くなるために、自分の頭で考える力をつけるために最も向いているのが算数だと言います。

 賢くなるというのは、「成績、偏差値を揚げるということではありません」と宮本先生。

 「偏差値が高くても、考える力の低い子どもを何人も見たことがあります。暗記が得意でも自分の頭で考えることができない子もいるでしょう。算数が得意な子は、考えることができる子は、集中力がある子と言えます」(宮本先生)

 とはいえ興味のないものに集中しなさいというのは無理な話。算数が得意な子は、算数が好きだから、算数に対して集中力を発揮できるのです。それは生まれつきなのでは? と思ってしまいそうですが、実は子どもが算数に興味を持てるようにするチャンスがあると言います。

 「子どもの興味を引きそうな材料を、さりげなく置いて、そっと見守ることです。それには単純計算より、自分でじっくり取り組んで楽しめるもののほうがいいんです」(宮本先生)。算数が面白いと感じ、興味を持つと、算数が好きになり、自分で考えることが大好きになる。ただし、「算数好きになってほしいからと、問題を押し付けたり、急かしたりすると算数が嫌いな、勉強が嫌いな子になってしまいます」(宮本先生)