これまで「治部れんげの『怒れ!30代』」を執筆し、先日、新連載「治部れんげ 小学生男子とジェンダーを語る」をスタートさせたばかりのジャーナリスト、治部れんげさんによる、元財務次官のセクハラ問題に関する、緊急寄稿です! ぜひご一読ください。

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メディアの現場でセクハラの事例はあっても、解決した事例は見当たらない

 元財務次官のセクハラ問題から始まり、メディアで働く女性記者が受けるセクハラ被害に関する報道が続いています。

 「週刊新潮」が報じた元次官の発言はあまりにお粗末で、エリート官僚とのイメージギャップが大きく、注目を集めました。今後、事実関係を調査したうえで、適切な対応が取られることを望みますが、本稿は元次官批判とは異なる視点から、この問題を考えます。

 女性記者のコミュニティーや、関連取材をする人たちには、連日、被害報告が寄せられています。例えば、全国の新聞社・通信社で働く人の8割、86組合・2万1000人が所属する日本新聞労働組合連合(新聞労連)は「全国女性集会」で共有されたセクハラ事例について4月22日に公表しています。

 ここには「女性記者の多くはセクハラを受けても流して職務に当たっている」「官公庁で取材相手のいる部署に行ったら『○○のラブホで待っとけ』などと相手に言われるなど悔しく、気持ち悪い思いをたくさん我慢してきた」といった実体験が書かれています。

 セクハラを受けた際、上司に相談した人も少なくないようですが、解決した事例の共有は見当たりません。上記の女性集会で共有された事例によれば「社外のセクハラは何度か経験したが、我慢しろ、かわせと教わっているので声をなかなか発することができなかった。私が断ったら社が嫌われてしまうと思っていた」「テレ朝同様の件で、若い記者からセクハラを受けたことについて記事にしたい、という相談を受けたことがある。所属長らに声を上げたが、結果的には無視された(結局、この女性記者は自分の経験を『取材で聞いた話』として掲載)」。同じような被害報告や上司の対応の不備を複数のメディアが報じています。

 様々な被害報告と、上司に報告した時の対応を見ると、問題は2つあると思います。

 第1に人権の問題であり、第2にメディア企業の経営の問題です。