セクハラは被害者だけでなく、周囲にも悪影響を与える

 法律を見れば、従業員のセクハラを見逃したり、セクハラされることを利用して仕事をするように指示したりすることは、男女雇用機会均等法に違反する可能性があります。厚生労働省の都道府県労働局雇用均等室が制作・配布している「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」という冊子を見ると、4ページ目に「職場」の定義があり、例として「取材先」も挙げられています。

 メディア女性のセクハラ被害報告は、取材先との飲み会の場で多く聞きます。飲み会に行かないと必要な情報を得られないような働き方や、セクハラ被害に遭いそうな状況でも、ネタを取るために飲み会参加を強要するような働かせ方が問題の本質にあることは、明らかでしょう。

 また、組織や経営の問題を考える時、忘れてはいけないのは、当事者だけでなく周囲に与える影響です。セクハラは直接の被害者だけでなく、周囲の人にも悪影響を与えます。特に被害報告を受けても管理職が何も対応しなかったり、我慢を強いたりする様を目の当たりにすれば「この組織には道徳や正義の観念が通用しない」と周囲の人は考えるでしょう。

 間違ったことが横行する組織において、そこで働く常識的な人は、密かに、組織に対するコミットメントを弱めていきます。それは、持っている力を十分に発揮しないとか、機会があれば転職したいと常に考えるような心理状態に結びつきます。一方、セクハラが温存されるような組織を心地よく感じる道徳心が欠如した人が増えていけば、悪貨が良貨を駆逐する状況が生まれます。経営者はそんなことを希望していないはずです。

セクハラが当事者だけでなく周囲に与える影響を忘れてはいけない(写真はイメージです)
セクハラが当事者だけでなく周囲に与える影響を忘れてはいけない(写真はイメージです)