労働組合の動きは速かった

 人権の観点からは、労働組合の動きが速かった、と思います。

 4月18日、新聞労連は中央執行委員長・小林基秀さんの名前で「『セクハラは人権侵害』財務省は認識せよ」という声明を発表しました。声明には「新聞社が新規採用する記者の半数近くが女性だ。多くの女性記者は、取材先と自社との関係悪化を恐れ、セクハラ発言を受け流したり、腰や肩に回された手を黙って本人の膝に戻したりすることを余儀なくされてきた。屈辱的で悔しい思いをしながら、声を上げられず我慢を強いられてきた。こうした状況は、もう終わりにしなければならない」と記しています。

 また、同じく4月18日に、テレビ局やラジオ局の労働組合が集まる日本民間放送労働組合連合会(民放労連)も同女性協議会の名前を前に出す形で、「財務次官セクハラ疑惑と政府の対応に強く抗議する」という声明を発表しました。「放送局の現場で働く多くの女性は、取材先や、制作現場内での関係悪化をおそれ、セクハラに相当する発言や行動が繰り返されてもうまく受け流す事を暗に求められてきた。たとえ屈辱的な思いをしても誰にも相談できないのが実態だ。この問題はこれ以上放置してはいけない」としています。

 理想を言えば、こうした文書に記されるように、職場のセクハラは人権問題という認識を多くの人が持ち、被害者に寄り添ってほしいものです。しかし、共感や怒りといった感情だけで動かせないものも、残念ながら世の中にはたくさんあります。

気になるのはセクハラ被害を相談された上司の反応

 そこで考えたいのは、経営の問題です。

 まず、気になるのはセクハラ被害を相談したときの上司の反応です。先に引用した新聞社、通信社やテレビ、ラジオ局で働く女性の体験談からは、取材先や取引先からのセクハラ被害を訴えた際、適切な対応がなされていない実状が見えてきます。無視された、それくらい我慢しろと言われた、というのが平均的なところでしょうか。

 これは一体何なのでしょう。一般企業で働く人は驚きや落胆を感じるかもしれません。メディアは普段、企業の不祥事や労働問題について厳しい報道をするのに、自社の従業員が被害に遭っても見逃すのか……と。