作家の辻村深月さんは、小学生と保育園児の2人の子どもを持つママでもあります。前編では、学校に行けずにいる子どもたちを描いた『かがみの孤城』を執筆した思いについて聞きました。後編ではお子さんと一緒に楽しんでいるという「サブカル」の話や、自身の子育て論、在宅ワーク生活における仕事と家庭の両立について聞きました。

「何となく、行きたくない」ことだってある

xwoman DUAL(以下、――) 辻村さんのお子さんがもし、『かがみの孤城』の子どもたちのように学校に行きたくない、と言ったら、どのように接すると思いますか。

辻村深月さん(以下、敬称略) 4年前の単行本刊行時にもよく聞かれましたが、そのときは長男は小学校に入学した頃で、実感としては不登校という単語が遠かったんです。その息子も小学校中学年になり、いつ「学校に行きたくない」と言われても不思議ではない年齢になりました。

 もし自分なら、学校に行きたくない理由を子どもに聞いて、複雑な子どもの感情をできるだけ複雑なまま聞きたいなと思います。大人は子どもが学校に行きたがらない明確な理由を知りたがりますが、現実の不登校って必ずしも明確な理由があるとは限らないと思います。子ども自身も行きたくない理由は分からないかもしれないし、これといった理由がなくて「何となく、行きたくない」ことだってある。

 「抱えている複雑な感情を、できるだけ複雑なまま親にぶつけてもいいんだ」と子どもが思ってくれるような親子関係でいることが大切かなと思いますし、それが理想ですね。また、もし子どもから、「学校に行きたくない」という言葉が引き出せたのなら、まずまずの関係が築けていると思って、そこから一緒に考えていきたいです。

作家の辻村深月さん(本は文庫版)
作家の辻村深月さん(本は文庫版)