外債のリスクとは?

 では、外債のリスクにはどんなものがあるのでしょうか。

1)カントリーリスク
 政情不安がある国の場合は、債券の価格そのものが下がる可能性もあります。これがカントリーリスクです。外債は、償還日前でも株式のように値がついて売買されています。償還日前に売却したい場合、購入時よりも価格が変わっている可能性があります。それでも、「株式ほど値動きが大きくないので、あまり心配しなくてもよいでしょう」と久保田さん。

 「売却するときに、買ったときの価格より大きく下がっているということは可能性としてあります。しかし、そもそも大きく価格が下がるようなところは債券を発行できないので、そこまで心配する必要はないでしょう。もちろん、テロ等の突発的な事態が起きる可能性はありますが、ある程度安心できる債券が販売されていると思っていいと思います」

2)為替リスク
 為替については、先ほど外債のメリットとしてお伝えしましたが、逆に動いた場合は、利益ではなく差損になる場合があることに注意が必要です。

 利回りが高くても、売却時・償還時に大きく円高になっていると、元本割れする可能性もあります。一方、円安に振れていれば、円で受け取る金額が増えるので、金利以上の利益を上げられます。「つまり、金利と為替を合わせて考えて、トータルでプラスになるかどうかが外貨建ての債券のポイント。円と米ドルの動きなら、ニュースで比較的耳にしやすいかもしれませんが、ユーロやポンドなどの値動きはわかりにくいので、購入後は積極的にニュースを見ておく必要があります」
 初心者なら、米ドルの情報が入手しやすいので、まずは米ドル建ての外債を検討してみるといいかもしれませんね。

 一方、為替リスクを回避するため、外貨で持ち続けるという方法があるようです。

 「償還時に為替が円高になっていた場合、外貨を円に換えず、外貨のまま使ったり、持ち続けたりする方法がある」と久保田さんはアドバイスします。

 「例えば、自分がもともと持っている米ドルを使って、米ドル建て債券を購入し、償還時もそのまま米ドルで受け取る場合、実質為替リスクはなくなります。円や他の通貨に変えない限り、為替による実損は発生しないといえます。また、保有する期間が同じであれば、外貨預金よりも外債の方が利回りは高いケースが多いので、選択肢としてはありでしょう。ただし、銘柄によって最低購入単位が違うので個別に確認してみてください」

 子育て世帯にとっては、外国の資産を持つことで、海外旅行に使ったり、将来の子どもの留学費用に充てたりという手もありそう。その他、例えば老後にハワイへ移住することを目標にし、米ドル建ての30年ものを購入しておけば、リタイア後、償還金を現地での生活費にそのまま充てるという手もあり、夢が膨らみます。

 「外債が償還されたときに、そのまま外貨を使う場合は、将来の為替リスクはなくなります。将来、外貨を使いたいと思っている人は、運用方法として選択肢の一つになるでしょう」

3)信用リスク
 信用リスクとは、債券の発行体の信用性があるかというもの。つまり利払いがきちんと行なわれるか、償還日にきちんと償還金が戻ってくるかというリスクです。

 「ただ考えてみると、現在の経済状況の差で、これだけの金利差があるのが現状です。国債の場合、10年後に、日本も米国も債券の償還ができないほど、財政破綻が起きているとは極めて考えづらいでしょう。事業債についても、ある程度の事業規模の会社であれば、倒産等のリスクが少ないと考えられます。金利とリスクのバランスを検討して、より自分に合った商品を選べることも外債の魅力といえます」

4)金利変動リスク
 日本の国債に比べて外貨建ての債券は金利が高めですが、変動することがあることを頭に入れておきましょう。「外債に限ったことではありませんが、債券は市場金利が上昇すると、債券そのものの価格は下落します。そうなると、投資元本を割り込む場合があるという点には、注意が必要です」

初心者におすすめの外債とは?

 では、初心者が外債を買いたいと思ったら、どのようなものがよいのでしょうか。ソブリン債でいうと、久保田さんのおすすめは「米国債」だそう。

 「米国債は2.654%と高い利回りを出せていますが、これは“経済の正常化”ができているからです。約10年前に受けたリーマン・ショックなどの大打撃から、いち早く立ち直れているのです。一方で、ドイツや日本は、まだ経済が復活しきれていない状況なので、金利が低いままと言えます。欧州中央銀行も、いずれ利上げをするだろうと言われていますし、日本も近いうちに少しは上がるとは個人的に思いますが、すぐにというわけではないので、今は米国債がおすすめしやすいです」。

 外債は、償還期限年数が10年、20年、30年と長いものもありますが、初心者の場合は短いものから始めるという手もあります。

 「短いものなら、1年、2年程度のものもありますし、それくらいであれば、為替の変動の予測がつきやすいでしょう。外債を買うのが初めてであれば、短い期間のものから始めてみてもいいと思います。ただし、いざ債券を売る場合も、すぐに円に換える必要はありません。そのタイミングで円高になっていたら、円に転換せず外貨で持っておいた方がいいケースもあるでしょう。債券が償還される際、日本円か外貨か、どちらで受け取るのが有利なのか確認してから手続するようにしたいですね」

 外貨を持っていればその国のニュースに敏感になり、自分の勉強につながることもメリットと言えそうです。外債の魅力は、日本の債券に比べて利回りが高く、外国の資産や異なる通貨に分散投資しながら長期投資ができること。気になる方はリスクと商品内容をしっかり理解した上で、まずは始めてみて、今後の長期投資のきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

久保田博幸さん
金融アナリスト
久保田博幸さん 金融アナリスト。1958年生まれ。証券会社の債券部で24年間、国債を中心とする債券リーディング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。専門は日本債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。現在、金融アナリストとしてQUICKなどにコラムを配信中。

(文/西山美紀 撮影/稲垣純也)

大和証券
子育てとお金の情報サイト「SODATTE」
外債かんたん検索
外貨建債券

・投資判断の参考となる情報提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではありません。
・大和証券でのお取引にあたっての手数料等およびリスクの詳細はこちら