『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』の著書などで有名な産婦人科医の宋美玄先生。自身も長男・長女の2人の子どもの母として、妊娠・出産を経験し、日々子育てに悩むこともあるという宋先生が、医師として、母として、産後の様々な悩みを持つママやパパの気持ちに寄り添ってお話しする連載がスタートします!

最初の3回のテーマは、産婦の3人に1人がなるといわれる「産後うつ」。でも、実際にこれはどんな症状なの? 一体どうやって対策をとったらいいの? 宋先生が説明してくれました。

「夫にイライラする」は、「産後うつ」ではない

 DUAL読者の皆さん、こんにちは。産婦人科医の宋美玄です。昨年「丸の内の森レディースクリニック」を開業し、女性たちの悩みに答えつつ、小1になる娘・ミコたんと3歳になる息子・ラーくんの子育てに日々走り回っています。妊娠・出産は、ライフステージの大きな変化。誰でも不安になったり悩んだりする時期ですよね。そんな悩みに少しずつ答えていきたいと思います。


 さて、今回は「産後うつ」についてです。

 「産後うつで、夫にイライラする」という人がいるのですが、まず知っていただきたいのは「産後うつ」と「産後クライシス」は違うものだということです。

【産後うつと産後クライシスの違い】

産後うつ
 産後1カ月を中心に起こるうつ病。要因は様々だが、妊娠や出産、子育てへの不安やストレスから起こることが多く、継続的な不眠や疲労感、イライラや不安、強い罪悪感などの症状が出る。病気のため、医師の診察などが必要。

産後クライシス
 産後、出産や子育てを通して、心身の変化や子育てによる疲労で、産後の夫婦関係が悪化してしまうこと。2012年9月。NHKの番組で初めて取り上げられ話題になった。病気ではなく、夫婦関係の状況を表している言葉。

 (→過去DUAL記事参照 「男女の脳は違う 産後クライシスはなって当たり前」

「産後、夫に対してイライラするのは、産後うつではありません」(宋美玄先生)
「産後、夫に対してイライラするのは、産後うつではありません」(宋美玄先生)

 「子どもを産んでから夫にイライラする」という声をよく聞きますが、これは産後うつではなく、産後クライシスです。産後クライシスは、夫婦のそうした産後の不和や関係の悪化などを指す言葉で、それ自体が病気なのではありません。

 一方、ニュースで、産後のお母さんが飛び降り自殺をしてしまったというような悲しいニュースも聞きますが、そうした自殺企図というのは明らかに産後うつの重篤な症状です。

 産後うつは、うつ病なので、もし罹患した場合には、最終的には命を助けることが重要です。産後うつのベースには社会的な背景や、未熟児や手がかかる子どものケアの不足、子育ての支援者不足などが原因として挙げられるので、周囲の適切なサポートを受けられるかどうかが、その症状に大きく影響してきます。早い段階で、家族、友人、医師などの助けを得ることが、改善に向かう鍵になります。

 だから、「子どもが生まれて以後、『大変だ』『つらい』ばかり言ってる」というママがいたら、距離を置くのではなく、周囲で気にかけ、声をかけてあげてくださいね。