妻の価値観を信じているから、意見に乗っかれる

 妻はゴールに向かってこうと決めた一直線のルートから、ちょっとでもずれるのが気になる人。かたや僕は正反対で、曲がってばっかりです。仕事でも日常生活でも、根本に愛さえあれば間違った行動はしないだろうというスタンスなので、高い山もウネウネ行けば登れるぞという生き方をしてきました。

 妻みたいに一本気な人からすれば、のらりくらりは気になるわけです。それに一緒に生活しているんだから、ゴールが同じであれば僕だって一直線に行けた方が早い。だから、僕が妻のルールに乗っかるようになった感じです。

 仕方なくとか、無理やりにでは全然ないんですよ。そもそも妻の価値観が素敵なんです。彼女は自分が楽をしたいとかで意見を言うことがない。そこには必ず正義があるんです。まぁだいぶ真っすぐですが…。言うならば現代のジャンヌ・ダルクのような人です

 話し合いをするときは、まず基本的に妻が自分の意見をズバっと言います。僕はというと、彼女の意見をくんだうえでちょっと歩み寄った位置からスタートする。例えば10と0の意見があって、妻が0の意見を言うとします。僕が本当は10の意見だとしても、最初から歩み寄っているので5という意見を言う。彼女からしたら5が僕の全力だと思っているから、いつも落としどころは間をとって2.5になる、みたいな感じです。

 「いやいや、俺だいぶ歩み寄っているんだけどな」っていう思いはありますけど、それで妻がご機嫌ならそれでいいじゃないですか。別に正解があるわけでもないし、だからストレスはありませんよ。

つらいことまで楽しめたほうが、人生はもっとお得

 妻がコワい、みたいな話をすると、「結婚なんてする必要ないじゃないですか」って言われるんですが、うれしいこともつらいことも全部が倍になるのが結婚です。もちろん独身でも、それはそれで結婚したら絶対味わえない幸せがあるので憧れる部分もありますが、せっかく結婚したのなら、つらさまで楽しめたほうがよりお得な人生だと思いませんか

 世の中が変わってきたとはいえ、まだまだ男社会だし、世間のパワーバランスは男に優位になっていると思います。うちも妻は出産してからしばらくは仕事を休んでいたし、今も育児を主に担っているのは妻です。女性は本当に大変。育児をしているほうからすれば、毎日仕事に行っている男なんて、趣味で好きな釣りに出かけちゃう人と同じに見えている部分もあると思います。そりゃストレス抱えますよ。

 せっかく結婚したのなら、妻のためにも生きる人生のほうがよっぽど楽しい。妻の機嫌がいいことが、自分にとっても一番機嫌よくいられること。そう思って僕は今日も、妻のイライラを回避するべく、より喜んでもらうべく、先回りの腕を磨いております(笑)。

(取材・構成/日経DUAL編集部 谷口絵美 写真/鈴木愛子)

土屋礼央(つちや・れお)
土屋礼央(つちや・れお) 1976年東京生まれ。2001年にアカペラボーカルグループ「RAG FAIR」のメンバーとしてデビュー。オリコンチャート1位・2位同時ランクイン、紅白歌合戦出場など、アカペラブームの立役者となる。個人では抜群のトークセンスを生かし、2002年から「土屋礼央のオールナイトニッポン」を3年半担当するなどパーソナリティーとしても活躍。現在、「土屋礼央 レオなるど」(ニッポン放送、月曜~木曜13時~16時)、「カメレオンパーティー」(NACK5、日曜16時~21時、放送時間は変動あり)、「西川学園高校、略してN高!」(ニコ生、毎月最終木曜22時~23時30分)にレギュラー出演中。2012年に結婚、5歳の息子がいる。