トーマスの世界を通してSDGsを身近に感じることができる

―― 今回の『映画 きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー』には、SDGsのどのような目標が盛り込まれていますか?

根本 映画では、トーマスが初めてソドー島を出る話が描かれています。アフリカを皮切りに、トーマスはいろいろな大陸を巡り、多様な文化や気候、多様な機関車やいろいろな動物たちと触れ合います。SDGsの多くの目標にまたがる「ダイバーシティの重要性」が盛り込まれていると言えます

 物語の途中でトーマスは水が足りなくなって動けなくなります。そこにはSDGsの6番目の目標「安全な水の必要性」が盛り込まれています。命の水は人間にとってだけでなく、機関車のような乗り物にとっても命であると表していると思います。また、この映画にはいろいろな動物も出てきて、目標の15番目にある「陸の豊かさを守る」ことも盛り込まれています。

中央がトーマス。右の機関車がケニア出身の女の子のニア
中央がトーマス。右の機関車がケニア出身の女の子のニア

―― 女の子の機関車も登場しますね。

根本 新しいキャラクターのケニア出身の女の子機関車のニアのことですね。これは5番目の目標である「ジェンダー平等」を伝えるために、国連が大変こだわったSDGsのキャラクターです。ニアというのは、スワヒリ語で「目的」という意味です。ニアは目的意識が高く、仲間を一生懸命に支える、芯の強い逞しい存在として描かれています。世界的には「きかんしゃトーマス」シリーズを見ている子どもたちの4割が女の子だそうですが、伝統的なジェンダーロールの枠を超えて、いろいろなことに挑戦していく女の子のキャラクターの姿を見て育つということは非常に重要だと思います。

 また、「きかんしゃトーマス」の世界観そのものが、SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくり」に関係しています。公共交通機関というのは、持続可能なまちづくりには欠かせないですからね。

子どもに世界の共通語であるSDGsを知ってもらいたい

―― 国連は他にも、キャラクターや総合エンターテインメント企業とSDGsとのコラボレーションを行っていますね。

根本 国連で決まった世界目標というと、ハードルが高いと思う人もいるかもしれません。私たち国連広報センターの最大の使命は、ハードルを下げて、皆さんにSDGsが自分も関われる課題だと知ってもらい、アクションを起こしてもらうことです。そこで、著名人やキャラクターの力を借りて、より多くの人にSDGsの情報を届けようと考えました。YouTubeを活用したり、人気キャラクターや、コンテンツビジネスやイベント運営に秀でた総合エンターテインメント企業などとのコラボレーションで、子どもたちに振り向いてもらうための様々な企画を進めています。

―― 何かを見て楽しみながら、子どもに自然に意識させることは大切ですよね。では、家庭ではどのようにSDGsに取り組んだらよいでしょうか?

根本 小学校の学習指導要領では2020年度、中学校の指導要領では2021年度からSDGsが盛り込まれます。小・中学生は一律にSDGsのことを学ぶようになります。学校に上がる前の子どもたちも、早い段階からSDGsというものに触れておけば、入学した時に、「これってトーマスが言っていたことだ」と気付くことができて、いろいろな学びがスムーズに行くのではないでしょうか

 子どもの心はスポンジのように多くのものを吸収していきますから、早いうちからSDGsという世界の共通言語を通して、世界的な価値観や知識を身に付けて、世界を渡っていけるような人物になってもらいたいです。

 「きかんしゃトーマス」のTVシリーズの新作には、SDGsの5つの目標(4、5、11、12、15)が盛り込まれ、それにゴール6を加えた6つの目標について解説するショートビデオも制作されています。2019年4月下旬から日本語吹き替え版が配信される予定ですので、それを見ていただくと、より一層、親子で話し合いながらSDGsを学べると思います。さらに、子どもと一緒にトーマスを通じてSDGsについて話し合うための保護者向けのヒントのアニメもあります。当面は英語版のみですが、1本ずつは短時間で、テキストも掲載されているので、ぜひ挑戦してみてください。