ケア労働は重要だから、男性の参加も促すほうがいい

 もう一つ、息子が指摘したのは「救急箱だって大事なのに、女が『は~い!』って感じで持っていると、大事じゃない感じに思えるのがよくない。火を消してもケガの手当てをしないと困るでしょ」ということでした。

 これも、ポスターの話を超えて社会構造の問題につながります。ポスターに描かれる救急箱はケガの手当て、つまりケア労働を象徴しています。私たちの社会には、家事、育児、介護、看護といったケア労働があり、その大半を女性が担っています。これらは人間が生きていくために重要な仕事ですが、女性だけに負担させることで仕事の価値自体が軽んじられている面があります。

 「ケガの手当ては大事なんだから、男が救急箱を持ってもいい」という息子の指摘は、「ケア労働は重要だから、男性の参加も促すほうがいい」という発想に通じます。

 最後に「やっぱり“少年”しかないのはね……」という話が出ました。「消防少年団員」は、実際には女児も参加していて、英語名は“Boys and girls fire club”です。日本語のほうも「少年少女消防団員」とか「子ども消防団員」としたらいいかもしれません。

 「消防少年団」は、火災予防などに関心がある小学1年生から高校3年生の子どもたちと、ボランティアで育成に当たる大人による活動ということです。初期消火訓練や消防に関する広報、応急救護の訓練など、大事な活動をしていると思います。ちなみに、東京消防庁のサイトの消防少年団を募集するページで、前のバージョンのポスターが見られるようですので、検索してみてください。

 このように、身の回りには、活動内容や役割は重要かつ素晴らしいものでありながら、ジェンダーという観点から見たときに、表現や言葉を工夫したらいいのに、と感じるものがあります。本連載では、今後も、様々なテーマを取り上げ、小学生男子の視点でジェンダーについて考えていきます。どうぞよろしくお願いします!

男は/女はこうあるべき、というジェンダー規範について、子どもは鋭い批判の眼を向けることがあります(画像はイメージです)
男は/女はこうあるべき、というジェンダー規範について、子どもは鋭い批判の眼を向けることがあります(画像はイメージです)

(写真/iStock、看板デザイン/千葉柚香)