発達性読み書き障害(以下、発達性ディスレクシア)とは発達障害の一つで、読み書きだけに特に困難を示す状態のことです。40人クラスに3人がこの障害があると言われていますが、「ちゃんと勉強すればいいのに」「授業を聞いていないのが悪い」と周囲から気付かれにくい側面があります。発達性ディスレクシアとはどのような障害で、どんなサポートが必要なのでしょうか。
 筑波大学元教授で発達性ディスレクシア研究会理事長の宇野彰さんと、お子さん2人が発達性ディスレクシアという漫画家、千葉リョウコさんのインタビューを前編・後編にわたりお届けします。

【前編】読み書きが難しい「発達性ディスレクシア」とは? ←今回はココ
【後編】発達性ディスレクシア 周囲のサポートと進路

読み書きだけに困難があるので気付きにくい

編集部(以下、――) 発達性ディスレクシアはどのようなものか教えてください。

宇野さん(以下、敬称略) 聞いて理解する力や自分の考えを相手に話して伝える力、知能には困難さがないとしても、読み書きだけに困難を示します。具体的には、音読や文字を習得することが難しい、音読ができてもスピードが遅い、漢字や仮名の形を思い出すことが難しいため文字が書けない・またはすぐに間違える、文字を書くことはできても文字の形を思い出すまでに時間がかかるため文章を書くのに時間がかかるといった場合を指します。

 大脳の文字言語に関わる領域の働きの問題によって先天的に起こり、就学前後に分かることが多いです。こうした子は日本の小学生の約7~8%、つまり40人学級に3人の割合です。なお、発達性ディスレクシアは日本語では発達性読み書き障害といいます。

―― 日本の小学生の40人に3人にこの障害があるとは驚きました。割合は高いのに認知度が低いのはなぜですか?

宇野 読み書きだけが困難であるため、「勉強ができない子」「努力が足りない子」と捉えられてしまい、見過ごされやすいのです。千葉リョウコさんのお子さんたちのように、お母さんが気付いて発覚するケースがほとんどですが、最近は学校で指摘されたという場合も少しずつ増えてきたように思います。

 小学校高学年になってもひらがなが完璧に習得できていない子もいれば、漢字の小テストでなんとかいい点がとれても、2カ月後にはその漢字をほとんど覚えていないという子もいて現れ方や程度の差はさまざまです。大人になって気付く人もいれば、ずっと気付かないままの人もいます。対処法としては、ひらがなとカタカナに関してはある条件を満たせば完璧に読み書きできるようになるトレーニング法があります。

―― 千葉さんは長男のフユ君、長女のナツちゃんが発達性ディスレクシアですが、どのように読み書きに困難があることに気付きましたか?

『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』(ポプラ社)6ページより
『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』(ポプラ社)6ページより