先行き不透明な時代が続いていく中で、子どもたちが自分自身で道を切り開いていくために必要なのは、「ゼロからなにかを生み出すクリエイティビティ」です。しかし、「我が子のクリエイティビティを伸ばしたい」と思っても、算数や国語と違って、親自身が教え方が分からないため、「どうしたらいいのか分からない」のが本音でしょう。

 そこに目を付けたのが、パナソニックの勝山雄介さん、國松志帆さん、赤井優也さんの3人。「お絵描き」を通じて、未就学児~小学校低学年の子どものクリエイティビティを伸ばすオンラインサービス「DrawNet」を開発中です。一体どんなサービスなのでしょうか?「うちの子はクリエイティビティや想像力が欠けている」と嘆くパパママ、必見です。

<プロフィール>
勝山雄介さん パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部/本業はドラム式洗濯機の設計。2019年にクリエイティブ教育サービス「DrawNet」のアイデアを社内のビジネスコンテストに応募し、現在実証実験中。1歳児のパパ
赤井優也さん パナソニック コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部/本業はビジネスモバイルPCの設計。音楽など芸術好きを見込まれて、勝山さんに誘われ、DrawNetプロジェクトに参加。
國松志帆さん パナソニック アプライアンス社 人事・総務センター/本業はCSR。勝山さんのプレゼンに共感し、DrawNetプロジェクトに参加。小学2年、3年、6年のママ

クリエイティビティは生き抜く力につながる

――新サービスとして、「クリエイティブ教育」に着目したのは、なぜでしょうか?

勝山雄介さん(以下、敬称略) 今後はAIをはじめ技術がどんどん進化し、人々の価値観が変わっていく中で、自分の意見を持ち、新しい価値を作ったり、自ら問いを立てて答えを見出す力が必要になります。そこで必要になるのが、ゼロから新しいものを生み出す力である「クリエイティビティ」です。

 クリエイティビティは、自分で道を切り開き、これからの時代を生き抜いていく力です。クリエイティビティを育むためには「何かを表現したい」という欲求が大切で、芸術はこの欲求を育むためのひとつの方法です。これは、我々が開発中の新サービスを監修していただいている京都造形芸術大学の水野哲雄名誉教授の意見でもあります。

 「芸術の根っこは、表現したいという欲求。その欲求を育むことで、新しい自分の生き方を見出す力、自分自身で道を切り開いていく力が育まれる。新しい何かを生み出すことは、新しい生き方を切り開くこと」(水野哲雄 京都造形芸術大学名誉教授)

赤井優也さん(以下、敬称略) インターネットやスマートフォンが普及し、たくさんの情報が溢れているため、自分が正しいと思う情報を信じて進んでいかなければなりません。自分の人生を選択し、自分らしく生きていく力を育むことがより一層求められると感じています。

クリエイティビティの伸ばし方がわからない

――子どもにクリエイティビティが無いことに悩んでいる親も少なくないと思います。

國松志帆さん(以下、敬称略) 私自身、小学2年生、3年生、6年生の3人の子どもがいます。幼少期は自由な発想で絵を描いていたのに、小学校にあがるといきなり、みんなと同じような絵を描くようになりました。『みんなと同じじゃないと恥ずかしい』という思考が子どもの中で大きくなっているように感じています。その結果、小学生になると60%のお子さんがお絵描きを嫌いになるというデータもあります(「子どもが絵を描くとき」磯部錦司著、一藝社)。

 また、我々が未就学児(4~6歳児)の親65人にアンケート調査を実施したところ、約25%にあたる17人が、「お友達の絵と比べると、うちの子の絵は稚拙。大丈夫かな?」と、自分の子どもの絵に関して不安に思っていることが分かりました。

勝山 未就学児から小学低学年の子どもを持つ親42人にヒアリングを行ったところ、約半数の25人が「クリエイティビティが重要で必要なことはわかるが、それを育む方法が分からない」と回答しました。「算数や理科など答えが決まっている科目は教えられるが、クリエイティビティの伸ばし方には悩んでいる」という声が多かったです。

DrawNetプロジェクトのメンバー。左から勝山雄介さん、赤井優也さん、國松志帆さん
DrawNetプロジェクトのメンバー。左から勝山雄介さん、赤井優也さん、國松志帆さん