インストラクターの声がけや友達からの刺激で発想が広がる

――自分が描いた絵をいろんな人がシェアして、意見を言い合うことがポイントですね。

勝山 子どもの「表現したい」という気持ちを伸ばすには、閉じた世界ではなく、開かれた世界で刺激を受けることが必要だと考えています。

 たとえば、「りんごの味を描いてみよう」という一風変わったテーマがあるとしましょう。子どもが描いた絵に対してインストラクターが「そのりんごの味は誰と食べたときのりんごなの?」といった言葉がけやファシリテーションをすることで、次描くときはこんな絵を描こうと発想が浮かんだり、他の子の描いた絵を見ることで、こんなりんごの味を描く子もいるんだ、と刺激をもらったりします。

國松 実際にインストラクター1人と親子4組で行ったビデオ通話型スタジオの実証実験では、1人の子がクレヨンを5本くらいまとめてぐるぐるっと描き出したら、それを見た他の子が同じようにクレヨンをたくさん持って描き出しました。折り紙を使い始めた子や顔を描き始めた子がいると、インストラクターがそれを紹介し、他の子がやり始める場面もありました。インストラクターの声がけや他の子の刺激を受けて、子どもたちの発想がどんどん広がっていくのを実感しました。

勝山 同じテーマで絵を描いていてもこんなに違う絵を描くことがわかって楽しかった、という意見もありました。絵を描いて、見せて、刺激をもらって、また絵を描いて、見せて、刺激をもらって、という繰り返しで、どんどんクリエイティビティが育まれるようなサービスを考えています。

テクニックを学ぶことが目的ではない

――テーマはどのようなものを想定していますか?

赤井 決まった正解に向かってきれいに絵を描くよりも、取り組んでいくうちに発想が広がっていくようなテーマを考えていきたいですね。

DrawNetの画面イメージ
DrawNetの画面イメージ

勝山 DrawNetは、絵のテクニックを学ぶことが目的ではありません。正解がないお絵描きの中で、子どもたちの可能性やクリエイティビティを育んでいきたい、と考えています。

 テーマとしては、先ほど紹介した「りんごの味を絵で描く」だったり、「毛糸で絵を描いてみる」「ペットボトルのキャップなど普段捨ててしまう廃材を使ってものを作る」「ランダムに打った点をつなげて絵にする」といったアイデアが上がっています。

 インストラクターも、子どもを導くスキルを持っている方であれば、アートだけでなくいろいろな分野の方にお願いしたいと思っています。

國松 絵を描いた後に、自分はこんな絵を描きたかったんだ、ということを発見することも大事にしたいと思っています。算数や理科といった決まった答えを導く学習のプロセスとは正反対のプロセスです。

子どもの新しい可能性の扉を開く後押しをしたい

――DrawNetを通じて、どんなことを実現したいですか。

勝山 お絵描きを通じて、子どもたちの生きる力や考える力を伸ばしていきたいと思っています。さらに、お絵描きを通じて、人と人がつながり、それがリアルな世界にも広がっていけば、素晴らしいですね。

 DrawNetは、親と子のコミュニケーションツールにもなると思っています。その課程で、「自分の子どもにはこんな可能性があるんだ」と気づいて欲しい。これによって、子どもの新しい可能性の扉を開く後押しをしたいと思っています。これは、創業者である松下幸之助の「ひとをつくる」という精神にも通じる、と思っています。できれば、1~2年以内に事業化したいですね。

DrawNetのサービス内容(英語)

取材・文/平野友紀子

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