親がきっかけを与え、とことんやらせる

――子どものクリエイティビティを育むためには、どうすればいいとお考えですか。

勝山 親はきっかけを与えるだけ、子どもがやり始めたらとことんやらせて、関心を持ってあげることが重要だと思っています。

 いきなり白い画用紙をパッと渡されても、何を描けばいいかわからなくて手が止まってしまいます。そんなときは、親が線を1本描いて、子どもが次の線を1本描いて……というのを繰り返していくと、何か変なものが出来上がります。それを見て魚に見えるね、など連想ゲームのように考えると、子どもの発想が生まれるきっかけになります。親子で楽しみながらやると、だんだん子どもが絵を描きたくなります。

 僕自身、幼少期にガイコツやドクロを描くのが大好きでした。なかなか理解されず、絵を見て気持ち悪いという友達もいました。でも、両親は自分の個性を認めてくれ、画用紙や画材をどんどん用意してくれたんです。絵を描くことが、親をはじめ、理解してくれる先生、友達とのコミュニケーションのひとつのツールになり、絵がどんどん好きになっていきました。その結果、ものづくりが好きになり、結果的に今の仕事につながっています。過去の自分を振り返ると、自分が好きなものを自由に描けることが、とても大事だったと思います。

お絵描き×子ども×クリエイティブ教育

――それが、クリエイティブ教育サービスのアイデアにつながっているのですね。

勝山 1年ちょっと前に子どもが生まれ、自分が好きだった絵に関することで、何か子どもに役に立てることはないか、と考え始めました。

 ちょうど、「STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)教育」と呼ぶ、自然科学系の科目に芸術を統合する教育方針や、ビジネススキルとしてのクリエイティビティが重要視され始めていた流れもあり、“お絵描き”“子ども”“クリエイティブ教育”の3つの要素を組み合わせれば社会に役立つことができると考えて、パナソニックの新規事業創出活動「Game Changer Catapult (ゲームチェンジャー・カタパルト)」の公募型ビジネスコンテンストに応募しました。それが、クリエイティブ教育のためのオンラインサービス「DrawNet」です。現在は、事業化に向けて、3人で実証実験を進めているところです。

 私と國松は滋賀県草津市、赤井は大阪と、拠点や部署が違うため、オンラインで連絡を取りながらプロジェクトを進めています。原則的に8割の時間を本業、2割をDrawNetに使っています。

オンラインでワークショップに参加できる

――親としてはとても興味がありますが、どんなサービスなんでしょうか。

勝山 DrawNetは、お絵描きを通じた子ども向けのクリエイティブ教育サービスです。さまざまなクリエイティブインストラクター(プロのクリエイターやアーティストなど)が、絵のワークショップ「Drawing Studio」(以下スタジオ)を開き、スマホ・タブレット・PCなどから専用アプリを通して親子で参加することができます。

 スタジオには、インストラクターごとに設定されたテーマがあり、いくつかの参加形態が用意されているので、子どもの個性に合わせて参加できます。

 スタジオには、定員無制限の「チャット型」と定員制の「ビデオ通話型」があり、どちらもテーマに基づいて子どもが描いた絵を写真に撮ってアップロードすると、インストラクターからコメントをもらえ、同じタイミングでスタジオに参加している親子全員と絵をシェアできます。どんどん描いた絵を見せ合い、お互いに刺激されることで、自由な発想が広がっていきます。サービスの料金は、月額課金を想定しています。

 さらに、プレミアムサービスとして、インストラクターとのダイレクトなコミュニケーションや、リアルなワークショップイベントなども予定しています。

――対象年齢はどれくらいですか。

國松 脳が最も発達するのは、未就学児頃までと言われており、クリエイティブ教育もこの年代が最も重要です。また、小学校2年生くらいまでは他の評価は気にせず自身で楽しめる時期なので、我々のサービスのコアターゲットは、4歳~8歳くらいを想定しています。