注目されている「非認知能力」が向上

――プログラミングに夢中になると、子どもは途中で何度もエラーが起きても、めげずにその原因を突き止めてロボットを完成させていきます。そうした経験は子どもにどんな影響をもたらすでしょうか? 

中野 注目されている能力の一つに、子どもの「非認知能力」があります。その能力とは、「自制心、やり抜く力、共感性、回復力、創造性」など、人が社会でより豊かに幸せに生きるために必要な力なんですね。

 中でも最も大事な能力だと感じているのが、「回復力=失敗してもリカバリーできる力」です。

 今の学校教育の場合、「失敗しないこと」「間違わないこと」を求められがちですが、社会に出ると「失敗してもいいから、最終的に結果を出せ」と真逆のことを求められて、戸惑いを覚える人が少なくありません。

 もし子どもの頃に、「失敗していい。そこからどうリカバリーするかが大事なんだよ」と教えてもらっていたら、大人になった時に失敗を必要以上に恐れず、新しい物事に果敢にチャレンジできるのではないでしょうか。

 失敗を重ねて試行錯誤しながらプログラミングをする体験は、回復力をはじめ、やり抜く力や創造性など生きていく上で大切な非認知能力を高めてくれるはずです。

embot(エムボット)とは?

 ダンボールなどの身近な素材で組み立てて、プログラムで動かすロボット。切り抜く、折るなど簡単な工程でロボットが組み立てられるダンボールと、サーボモーター、LEDライト、ブザーなどがセットに。無料の専用アプリをタブレットやスマートフォン、Windowsパソコンにダウンロードすれば、すぐにロボットを動かすことができる。ロボットとデバイスの接続はBluetooth。

 付属のダンボールにとどまらず、紙コップや空き箱、牛乳パックなどの身の回りにある素材を使って、自分だけのオリジナルロボットを作るのも楽しい。

 プログラミングのレベルは1~5段階まであり、自由に選択可能。経験のある子どもは、最初からより難易度の高いプログラミングに挑戦できる。値段は6600円(税込)。

 プログラミング教材として活用する小学校も増えてきている。

■embot(エムボット)の詳しい説明はこちら

無料のアプリは、下記からダウンロードできます。
■App Store(iOS)
■Google Play(Android)
■Microsoftから入手(Windows10、Xbox One)

■タカラトミーモールで購入
■ユーザーズサイト embotters

中野信子
中野信子 脳科学者。1975年生まれ。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京大学工学部卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授。最新の脳科学・認知科学の観点から、人物や人間関係を解き明かす。『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)、『脳はどこまでコントロールできるか?』(ベスト新書)、『サイコパス』(文春新書)、『科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)など著書多数。

取材・文/伯耆原良子 撮影/鈴木愛子