いま多くの小学校では、がんをテーマに健康や命の大切さについて主体的に学ぶ授業が始まっています(※)。そもそも私たち大人はがんの原因やリスク、最近の治療法などについて理解しているでしょうか。何事も、知って備えることで、安心して日々を楽しめるもの。ぜひいちど親子でがんについて学んでみませんか?
※文部科学省「がん教育の実施状況調査の結果について」によると平成30年度、全国の小学校では56.3%でがんについての授業を実施。

◇「親のがんと子ども」スペシャル◇
 ――3回連続でお届けします――

第1回「ママのがん」について学んだ13歳のメッセージ ←★今回はココ

第2回 がんサバイバーFPが語る「仕事と娘とおカネのこと」

第3回 がん保険解体新書「家族と保険のベストバランス」

 がん教育って何だろう。本当に必要なのだろうか。――こんな疑問へのひとつの答えを、13歳の笠島彩楓(さやか)さんが教えてくれた。彩楓さんががんについて精一杯調べ、自由研究のレポートを作ったのは小学校6年生の夏休み。その1年前に、お母さんの由紀さんががんであることを知らされたからだ。


入院治療が始まったお母さんを見舞い、満面の笑みの彩楓さん。11歳なりに頑張り、「ママの"咳の病気"」が治るようにお父さんたちと祈っていた
入院治療が始まったお母さんを見舞い、満面の笑みの彩楓さん。11歳なりに頑張り、「ママの"咳の病気"」が治るようにお父さんたちと祈っていた

一番のショックは私だけ知らされていなかったこと

彩楓さん 母はフラダンスが好きで私が生まれてからずっと続けていました。私も3歳から小6まで一緒に習っていました。母の好きなところは、どんな話でも聞いてくれて、私がやりたいことは応援してくれるところです。

 三重県の中学校に通う彩楓さんの“お母さん評”はほぼ満点。母・由紀さんは、ひとり娘の絶好の相談相手でありかけがいのないサポーターだ。

 その由紀さんは4年3カ月前、41歳でがんと診断される。当時、彩楓さんは小学校3年生だった。両親は娘の年齢を気づかい「ママの不調は咳の病気」と伝えることを決めた。けれど、治療が長引き3年めに入るころには熟考を重ね、お母さんの入退院はがんの治療のためであることを彩楓さんに伝えることにした。実際に告知したのは、彩楓さんが5年生の夏休みだった。

彩楓さん がんだと言われたときはとてもびっくりしました。でも、がんについてよく知らなかったので、母に「ふーん、そうなんだ」と答えたんです。

 由紀さんが拍子抜けするほど呑気な反応には、どう応じていいか分からない戸惑いと、11歳なりの繊細な思いやりもあったはずだ。その後しばらく黙っていた彩楓さんは、急にペンを手にして黙々とイラスト画を描き始める。そして20分ほど経ったころに、手を動かしたまま「私、ママの応援団になるね」と言ったという。由紀さんの忘れられないシーンだ。

 しかしこれに続く会話で、彩楓さんは大きな憤りに包まれることになる。ふと、「パパは知ってたの? おじいちゃんやおばあちゃんは知ってたの?」と彩楓さんが聞くと、由紀さんから「もちろん知っていたわよ」という答えが返ってきたからだ。

彩楓さん 何で自分だけが教えてもらっていなかったのかと腹が立ってきました。誰よりも先に教えてほしかったとのにと思いました。家族なのに私ひとりだけに母の病名を隠されていたのは、とてもショックでした。

 数カ月の間は時おり彩楓さんの悔しい気持ちがあふれ出し、夜、急に目を覚まし泣きながら訴えることもあった。その度に由紀さんは「言わなくて本当にごめんね。これからは何でも話すから安心して」とくり返し、心底、娘に正直でいようと決意したという。