妻が妊娠。プロのマジシャンになる最後のタイミングだった

―― では、どのタイミングで独立したのですか?

ヨッシー 今から2年前の2016年、僕が30歳のころに、妻が妊娠したことがきっかけでした。最初は普通に「子どもが生まれるんだな。うれしいなぁ」と思っていたのですが、ちょっと待てよ…とふと考えたんです。「子どもが生まれたら、もう転職や独立はできないよな。すると、僕はこのままずっとサラリーマンをやるのか?」と。

 そして、「マジシャンになるのだとしたら、子どもが生まれる前の今が、最後のタイミングなんじゃないか?」と思ったんです。

―― 普通は、奥さんが妊娠した時点でアウトだと思いますが…(笑)。奥さんは、何と言ったんですか?

ヨッシー そうですよね。さすがに僕も、このタイミングで妻に「会社を辞める」って言ったら反対されるよな、と覚悟していたんです。でも恐る恐る気持ちを伝えてみると、逆に「早く辞めて独立しなよ」と背中を押してくれたんです

 どうやら、妻は常々「いつ独立するんだろう」「もしかしてマジシャンの夢は諦めちゃったのかな」と心配してくれていたみたいなんです。妻からすると「やっとその気になったのか」という感じだったのかもしれません。

―― 初めての妊娠、そして出産を控える身で、なかなか言える言葉ではないですね。ちなみに当時、奥さんはお仕事をされていたのですか?

ヨッシー 全国チェーンの飲食店で働いていました。今は育児休業中です。

 僕も「マジックで稼げなかったら、他にバイトでも何でもして、食うには困らせない」と、妻に約束しました。好きなことをやらせてもらうわけですからね。

 でも結果的に、会社を辞めた翌月、50万円稼げたんです

―― いきなり50万円も! それはすごいですね。

ヨッシー 時期もよかったんだと思います。2016年の11月に退職して、僕は関係各所に独立することを伝えました。「マジシャンで食べていくので、よかったらイベントで使ってください」と。ちょうど12月の忘年会シーズンだったこともあり、多くのご依頼をいただけたんです。

 「よし! なんとかなるぞ」と思ったのですが、翌月の1月は全然仕事がありませんでした。依頼はたったの1、2本。「1月は新年会があるはずじゃなかったの? ヤバイ…」と、このときは本当に焦りましたね。

飲食店でマジックを披露する吉野さん
飲食店でマジックを披露する吉野さん