キッチンを使いやすくする2つのポイント

 ここでキッチンの「環境整備」で大切な2つのポイントをご紹介しましょう。

 1つ目は動線です。これは建築家が設計のときに重視することですが、シンク、コンロ、冷蔵庫がそれぞれ2~3歩の距離にあり、この3つが正三角形に近い形で配置されていると、とても調理がしやすくなります。電子レンジや炊飯器、ゴミ箱、よく使う食器もこの動線上にあると効率が良いです。

 もうひとつは3つの作業スペースを確保することです。その3つとは、料理の材料を置く「準備」スペース、材料を切ったり混ぜたりする「調理」スペース、料理を盛り付ける「配膳」スペースです。

 

 我が家は以前社宅に住んでいて、とても小さなキッチンでした。調理スペースは幅45㎝しかなかったので、まな板を置いたらおしまい。材料やお皿を置くスペースが取れなくて、盛り付けたお皿を持って、どこに置いたらいいのかとウロウロしていたものです。

 でも、こうした考え方を知ってからは、まず、シンク、コンロと正三角形になるように冷蔵庫をガタガタと動かしました。それからキッチンの横の棚を整理して「準備」スペースを作り、コンロに差し込んで使う「レンジテーブル」というグッズを取り入れて「配膳」スペースを作りました。こうしたことで、料理の効率がよくなり、時間がかからずにごはんが作れるようになりました。「環境整備」によって、家事が格段にラクになったのです。

家事だって効率よくしようという思いで「知的家事」と命名

 その勢いで、リビングや寝室などの掃除に関わる「環境整備」も行い、家の中のモノを少しずつ減らしていきました。モノが減ると家事は格段にラクになります。最後は洗濯の動線の見直し。洗う場所、干す場所、しまう場所を近づけ、動線を短くすることで、わが家はとても家事がしやすい家になりました。

 私の周りにも家事で困っている方がたくさんいたので、自分の経験をお伝えしようと思い、自主的にセミナーを開いているうちに、共感してくれる企業が出てきて会場を提供してくださったり、女性誌の特集で声をかけていただくようになり、家事プロデュースが私の仕事のひとつになっていきました。

 この仕事を始めたばかりのころ、一世代上のあるキャリアウーマンが「私たちもとても苦労してきたから、あなたの仕事を応援している」といってくださいました。セミナーに夜行バスで駆けつけてくださったことは忘れられません。

 当時も今も私が提案しているのは、家事を効率的に行うことで、ラクになり、家族が笑顔になる暮らしです。でも、当時は「ラクに家事をしましょう」と大声で言うのは、まだ後ろめたい時代でした。ラクをしたり、収納のためにお金を出してグッズをそろえるということに罪悪感があるかたが多かったのです。そこで、「家事を効率的にするのた知的なこと」というメッセージを前面に出し、裏には「ラクにしてもいいんだよ」という思いを込めて、「知的家事プロデューサー」と名乗ることにしました。「知的家事」というのは私の造語です。

本間さんは様々な「知的家事」の方法を著書などで提案している
本間さんは様々な「知的家事」の方法を著書などで提案している