社会人として自立した生活を送るために欠かせない“お金”の知識。しかしながら、そのイロハについてしっかりと学んでから社会に出たという人は、ほとんどいないのではないだろうか。

  結果、軽い気持ちで借金を重ねてしまったり、大きな買い物で損をしてしまったりと、金銭トラブルが人生の足枷に…。そんな経験をわが子にはさせたくないと思いながら、金銭教育の機会を作れずにいる読者は多いはず。

 「自立した人生を送るためのお金の知識こそ、学校教育で教えられるべき」

 そんな信念をもって、これから社会に出ていく子どもたちに向けた金融経済教育の取り組みが行われている。主催するのは社会人向け総合マネースクール「ファイナンシャルアカデミー」。東京品川区の品川女子学院高等部で行われた授業の模様を紹介する。

(上)「お金の知識こそ学校で教えられるべき」高校で授業
http://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/101200003/022700072/

「家を買うなら新築?中古?」新築はなぜ高いのか

 「人生で一番大きな買い物といえば、マイホーム。今日はマイホームの賢い買い方について考えていきましょう」

 おそらく、日本全国を見渡しても、16歳、17歳の年齢で、マイホーム購入のノウハウについて考えるという機会は滅多にないだろう。「身近に考えにくいのでは?」という記者の心配をよそに、女子高生たちの眼差しは真剣だ。

「将来、皆さんがとても素敵な家を見つけたとします。どうしても欲しい家が3000万円。でも、貯金は500万円。どうしますか?」
「将来、皆さんがとても素敵な家を見つけたとします。どうしても欲しい家が3000万円。でも、貯金は500万円。どうしますか?」

「家を買うなら新築がいいですか? 中古がいいですか?」

 挙手の数を比べると、新築希望が多数派だった。

 ここで山村講師は2つのデータを見せる。日本の住宅購入の実態を見ると8割以上は新築物件だが、意識調査では「中古でもいい」と思っている人が4割に上る。このギャップが生まれる背景には、中古物件に対して厳しいローン事情や、新築物件への税制優遇などの金融政策があると説明をする。

 さらに、「中古物件より新築物件が高くなる理由の一つに、モデルルームなどにかかる販売促進費があり、販売価格の2割程度を占める」といった、大人でも「へぇ~」と言いたくなる知識を分かりやすく解説していく。

 授業はさらに実践的な展開へ。

山村講師「将来、皆さんがとても素敵な家を見つけたとします。どうしても欲しい家が3000万円。でも、貯金は500万円。どうしますか?」

生徒「ローンを組むと思います」

山村講師「そうですね。住宅ローンには、大きく分けて2つあります。政府と銀行が協力して提供しているフラット35と、各銀行が独自に提供する民間の住宅ローンです」

 それぞれの特徴を簡単に説明すると、「では皆さん、実際に“28歳になったときに住みたい夢の家”を探してみましょう。手元のiPadで住宅情報サイトを開いて、検索してみてください」と山村講師が促す。