保育士向けイベントで保育の理想と現実をディスカッション

 2月中旬に都内でNPO法人フローレンスが主催するイベント「プロフェッショナル 保育の流儀」が開催されました。フローレンスは、病児保育や待機児童問題などに取り組む保育事業者で、都内と仙台に25園の保育現場を運営しています。第3回目となる今回の「プロフェッショナル 保育の流儀」は「自分の保育の理想と現実。このギャップ、どうやって埋めればいいの?」をテーマとして、人気保育士のてぃ先生が登壇。約80人の保育士が集まり、保育の理想と現実について話し合いました。

 イベント冒頭ではてぃ先生が「初めて働いた保育園では月に数百時間の残業があり、疲弊して自分が保育を楽しめなかった」「理想の保育を実現するには保育士自身の余裕が必要」「しかし、それぞれの保育園にある風習を変えるのは大変」と自らの体験を語りました。

 その後、フローレンスが運営する保育園のスタッフや園長3名とてぃ先生のトークセッションがスタート。「子どもの甘えを受け止めることと、甘やかすことのラインに迷う」という保育士の悩みにてぃ先生が「大人が先回りしてやってあげるのが『甘やかし』で、求めていることをやってあげるのが『甘えさせる』だと思う。やってあげることは『甘やかし』ではなく、そうすることで、子どもは安心して次の遊びに行けるのでは」とアドバイス。

 業務の多さに悩む園長には、「スタッフとのミーティング、面談は、スラックやチャットなどを取り入れることで、効率化でき、スタッフの本音も聞きやすくなるのでは」と提案。登壇した保育士が話す現場の課題に対して、参加者が自分の体験を話す場面も見られました。

 続く参加者からのQ&Aコーナーでは、保育の仕事を続けることへの悩みに真剣に回答したほか、てぃ先生が保育の現場で取り入れたデジタルツールについてのエピソードを披露。野菜を食べない子どもへの解決アイデアなども飛び出しました。

 休憩をはさんだ後半では参加者が数名ずつのグループになって、保育の理想と現実についてディスカッション。てぃ先生が各グループを回り、共感したりアドバイスをしたりしました。ディスカッションは盛り上がり、終了時間を過ぎても、話し込む姿があちらこちらに。てぃ先生へ質問をする人が長い列を作りました。

 保育の課題が明らかになると同時に、それを解決しようとする保育士の熱意が実感できるイベントとなりました。

てぃ先生
氏名(しめい) 関東の保育園に勤める現役男性保育士。子どもの豊かな感性とそれに対する気づきを発信したSNSが大人気となり、いまやフォロワーが約47万人に。SNSを基にした著書やコミック、アニメも好評。保育の現場に対する提言や子育てに関する講演、保育士との勉強会も行っている。

取材・文/福本千秋(日経DUAL編集部) 撮影/木村 輝