クラスに担任の先生がいるのは、多くの人にとって当たり前の光景でしょう。そんな「当たり前」を次々と覆しているのが、千代田区立麹町中学校です。2014年に着任した工藤勇一校長は、担任制や宿題、定期テストを廃止するなど、さまざまな改革を推し進め、部活の顧問に第一線の技術者を迎えるなど、民間企業・団体との連携も進めています。2019年11月に実施された企業主催のワークショップの様子を中心に、ビジネスの力を借りて教育を変えようとする同校の取り組みを取材しました。

「国連総長と面会した」「内申のため」多彩な生徒がSDGsを議論

SDGsについて解説する、日本コンベンションサービスのスタッフ
SDGsについて解説する、日本コンベンションサービスのスタッフ

 この日同校では、多くの民間企業・団体の協力で、AI(人工知能)やSDGs(持続可能な開発目標)がテーマのものや、ウクレレやゴスペルを通じた表現力向上など、10以上のワークショップが開かれました。企業関係者らが教育分野の技術革新を議論する「Edvation x Summmit (エドベーション・サミット)」の一環として開催され、全校生徒約400人が、それぞれ希望するクラスに参加します。

 その1つであるSDGsのワークショップ(主催:日本コンベンションサービス)は、「貧困撲滅」「格差解消」「教育機会の確保」などSDGsの17の目標を達成するため、自分たちに何ができるかを議論するクラスです。

真剣な表情で聞き入る生徒たち
真剣な表情で聞き入る生徒たち

 参加したのは、1~3年生までの約20人。少年少女国連大使としてSDGsの活動の一貫で、国連総長と面会したという生徒もいれば、「海洋プラスチックごみなど、環境問題に興味がある」という生徒もいます。そうかと思えば「内申のため」と語るちょっと斜に構えた男子や、「SDGsという名前が強そう」と話す女子も。「SDGsを知っている人はいますか?」という進行役のスタッフの問いに、手を挙げたのは3人ほどで、理解の深さも、参加の動機もまちまちなメンバーがそろいました。

 生徒たちは5~6人のグループに分かれ、議論が始まります。