今、教育の現場へのパソコン導入が進んでいるが、世界各国と比べると日本はまだまだ遅れているのが現状だ。学校では教えてもらえないICTスキルを伸ばし、子どもに自分の価値や存在意義を認める感情(自己肯定感)を支えるのは親の役目だと国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(以下、国際大学GLOCOM)准教授・主幹研究員の豊福晋平さんは言う。そのサポート役にうってつけのパソコンとしてDynabook『dynabook V8』の魅力を紹介していく。

子どものパソコン活用とは?▽豊福さんインタビュー動画▽

世界に比べてダントツに低い日本の子どものICT活用

豊福晋平(とよふく・しんぺい)。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授・主幹研究員。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退、1995年より国際大学GLOCOMに勤務。専門は学校教育心理学、教育工学、学校経営、教育情報化
豊福晋平(とよふく・しんぺい)。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授・主幹研究員。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退、1995年より国際大学GLOCOMに勤務。専門は学校教育心理学、教育工学、学校経営、教育情報化

 国際大学GLOCOM 准教授で主幹研究員の豊福晋平さんの専門分野は、教育へのICT普及。子ども一人ひとりに1台ずつ情報機器が行き渡ると、子どもたちの活動がどのように変わっていくのかに高い関心を持っているという。

 「子どもたちが日常的にパソコンを使っていて、その延長線上に授業があったら、先生に指示されなくても、授業が始まれば子どもたちは自然にパソコンを開くし、説明を聞きながらキーボードやペンでメモを取ったり、黒板の板書を撮影したりするでしょう。欧米ではそうなりつつありますが、日本では違います。ごくたまにパソコンを使う授業はあっても、普段の授業ではパソコンを使わない。経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessment ; PISA)の結果を見ても、日本の学習用途でのICT活用は調査参加国のほぼ底辺に位置しています」

 2015年に調査された最新の結果では、日本は科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーでは上位に位置している一方で、「校内・校外での学習用途のICT利用」のスコア(※)はOECD平均を大幅に下回り、調査参加国・地域のなかでも、ダントツに低い。

 豊福さんは「本来、ICTを学びにつなげるのは学校の役割です」と前置きしたうえで、「しかし、学校ではほとんどパソコンが使われていない以上、保護者の方が、日常生活の延長で学びを捉え、どのような使い方ができるか考えるのが建設的です」と指摘する。では、具体的に親は子どもに対してどのようにすればいいのだろうか。

 「子どもは基本的に親のまねをしたがりますよね。親のしていることは、自分たちの将来につながるものだと確信しているのです。ですから“これをやらせよう”以前に、パソコンで何かを作ったり、他の方に連絡を取ったりという姿をさりげなく見せるだけでも、子どもにとっては大きな刺激になると思います」と豊福さんは話す。

 例えば、タイピングしている姿は、子どもの目には憧れの対象としても映る。そして子どもがパソコンに興味を示したなら、パソコンに関する知識や具体的な操作方法を教えることよりは、パソコンならではの使い道の理解を共有することが親の役割として大きいという。

 「パソコンは、タブレットやスマートフォンとは違い、“何かを組み合わせて別のものを作る”知的生産に関わりやすい道具です。例えばアルバムを作ってみようとか、動画を編集してみようとか、まずは物事を作り出す方向へ興味を向けさせることができれば『パソコンってこういうことに使えるんだ』と子どもは認識するようになります」

 子どもに必要なのは“自分でなんとか使いこなせる機械”と思わせることが大切です、と豊福さんは言う。「『これはやっちゃだめ』『触ったから壊れた』などという言葉は、パソコンを難しいものとしてしまい、子どもは関わりを避けるようになってしまいます。でも、一度自分でできる経験があれば、それが自信になり、実社会での問題でも『自分でなんとか解決しよう』と思うようになります。こうした経験は、パソコンの使い方を身に付ける以上に、子どもにとっての大きな糧となるのではないでしょうか」

 せっかく芽生えたパソコンへの関心を奪わないためにも、自己解決力とその先にある自信、自己肯定感を高めるためにも、子どもがパソコンを自在に操れる道具にするまでを親がサポートするのが良さそうだ。

(※)出典:豊福晋平(2017)「PISA2015 ICT活用調査における日本 教育情報化の現状と課題」日本教育情報学会33回年会論文集 pp.228-229