家族みんなが利用するトイレは「家事シェアに最適の場所」と話すのは、家事評論家でコラムニストのももせいづみさん。「子どもが掃除に参加することで想像力や好奇心の芽は伸び、エコについて考える機会も得られます」。トイレと家事と家族とエコについて、たっぷり語ってくれました。

【日本のトイレ事情】トイレは居心地のよい憩いの空間に進化した

 トイレの掃除を子どもにも任せられるのは、最近のトイレが以前に比べ格段に安全で清潔になったからです。私が学生の頃まで、日本のトイレは学校や百貨店などでもキレイとは言い難い空間でした。英語ではトイレを「レストルーム」とも呼びますが、その通り、欧米のトイレは昔から、ひと息つき身づくろいをするための空間でもありました。用をたすための場所であり続けた和式トイレとは大きく違う考え方が、腰かけるスタイルの洋式トイレでは熟成し深化してきたのでしょう。

 こういった海外の思想を見習い始めた日本は、秀逸なものづくり精神を発揮して、瞬く間に比類のない優れた機能を持つトイレを生み出しました。今や日本のトイレは世界でも有数の、清潔で居心地のよい憩いの場、レストルームとなりましたよね。

 多彩なアイデアと技術が盛り込まれ、除菌システムや節水タイプ洗浄なども登場。お手入れもグンと楽になり地球環境への配慮が行き届いた製品も確実に増えてきています。調べてみると家庭用トイレにも興味深い仕掛けや話題がいっぱいです。

【家事シェア】トイレ掃除でやさしさまで身につく!?

 私が長く皆さんに提案してきた「家事シェア」とは、家庭内に家事を「する人・手伝う人」がいるのではなく、全員で家事をしようという考え方です。そもそもは仕事・家事・子育てを一人で回すのは無理! と私自身が気づき、必然的に始まったウチのルールでした。

 息子は幼いころから炊飯の担当でした。彼がお米を研いで炊かないと食卓にご飯はのらないのですから重要な任務です。お手伝いどころか、そんな風に責任が発生する役割にしたことで家事が自然と身についていったように思います。

 トイレ掃除にも、成長するにつれて関心を持つようになり、昨年末には便座やタンクの分解掃除までしてくれていて驚きました。根っからのメカ好きが家事習慣と合体しトイレ掃除にばっちり活かされている(笑)。

 トイレ掃除は家族全員でシェアしてほしい家事のひとつです。トイレは365日みんなが使い、生きていく上で欠かせない大切な空間ですから家族も納得できるはず。ポイントは大人も子どもも掃除しやすい環境を作ること。あまり厳格に相互の“サボりチェック”はしないこと。余計なストレスから雰囲気が悪くなってしまうと家事シェアは頓挫しがちです。

 昔のトイレはタンクや配管が複雑に配置されているうえに臭いも気になり、はいつくばってする掃除には自己犠牲のイメージさえありました。しかし最近のトイレは、便器の汚れも付きにくくなっていたり水のタンクもコンパクト化されて床の掃除もスムーズにできるようになりました。新しいトルネード洗浄といわれる渦を巻くような水流だと、便器の中の汚れをより確実に取り除いてくれるうえに周りの壁や床への水はねまでも減りそうに思えます。つまり非常に清潔なトイレが保たれ、安心して子どもにもトイレ掃除を任せられるようになりました。

【汚れと想像力】「キレイにして退出する人」になる

 幼い子どもには、「汚したらその場できれいにしよう」の声がけからスタートしましょう。これならトイレットトレーニング時期からも始められます。トイレを汚したら、便器の陶器部分は専用のブラシで、床はトイレットペーパーでサッと汚れを取り除けばOK。時期を見て徐々に家庭ごとの掃除の方法を教えてあげましょう。掃除しやすい形状やかわいいデザインのトイレブラシを一緒に選ぶのも楽しいもの、自然と掃除に意識を向けられます。

 こんなステップの中で、「次に使う人」の気持ちと掃除する人の手間とを思いやる想像力は確実に芽生えます。「汚れに気づいた人がキレイにする」習慣は、あらゆる家事、チームで行う作業や仕事にも必要な目配り、思いやりの基本だと思いませんか? 逆に、知らないうちに磨かれ片付けられている環境では、家事や掃除を担ってくれている人への感謝の気持ちもなかなか湧きません。