「いじめを見ていた奴が『やめろ』と言おう」と言えなかった

―― 岩隈さんの子ども時代を振り返ったとき、身の回りにいじめはありましたか?

岩隈 いじめには、加害者、被害者、傍観者が存在します。僕自身、いじめられたことはありませんが、いじめたことがないとは言い切れないと思います。僕自身その認識はありませんが、相手はいじめられたと思っているかもしれないからです。ただ、集団でひどいいじめをしたようなことはないです。

 いじめに関しては、ある印象深い出来事がありました。僕が中学生の頃、ある中学校の男子生徒がいじめを苦に自殺したことについてホームルームで話し合う機会があったんです。「なぜいじめが起きたのか? なぜ男子生徒は自殺しないといけなかったのか?」と。そんないじめを考える機会があったおかげか、クラスではいじめはほとんどありませんでした。

 でもあるとき、ブレザーに黒板消しの跡を付けられた子がいて、犯人探しになったんです。「BE A HERO プロジェクト」では、「いじめの傍観者になってはいけない」と伝えていますが、当時の僕は「見ていた奴が『やめろ』と言えるようにしよう」とは言えませんでした

 今は、「BE A HERO プロジェクト」で、いじめのない社会をつくりたいと願っています。

―― 最後に、今後の野球選手としての活動について教えてください。

岩隈 残りの野球人生でどんな挑戦をしていくのか、ということは常に考えています。僕はこれまで、大阪近鉄バファローズに始まり、東北楽天ゴールデンイーグルス、そして海を渡ってシアトル・マリナーズでプレーし、今年日本に帰ってきて読売ジャイアンツで投げることになりました。

 「まだできる」という気持ちがあったからこそ日本に戻ってきましたし、その中で一番必要としてくれたチームが巨人でした。今はそんな巨人に恩返ししたいという気持ちが強いです。チームやファンの皆さんのためにベストを尽くして頑張ります。