高齢で権力があるからこそ「NOを言える人」を周囲に置くべきだ

 高齢だからしょうがない、という声も聞こえてきたが、それにははっきりとNOと言いたい。今回の発言は誰がしてもダメだが、森氏は特に「元総理」であり現在も絶大な権力の持ち主である。しかも「これはまた悪口を言ったと書かれる」と発言しているところを見ても「無意識」での発言ではないことは明らかで、女性理事を増やそうとしているところにわざと冷や水を浴びせていると受け取るほかはない。

 権力者による冷や水は大きな影響を与える。男女平等が全く十分ではない日本の現状にあって、これまで不当に女性の立場が低かったこと、それにより貧困を余儀なくされる女性がたくさんいること、新型コロナウイルスのパンデミック発生後の解雇や雇い止めとなった女性の割合は男性の1.2倍、非正規雇用の女性に限っては1.8倍であること(「新型コロナウイルスと雇用・暮らしに関するNHK・JILPT共同調査」より)、ジェンダーギャップ指数が日本は153カ国中121位であることを理解していたら、とてもじゃないけど言えないことだ。

 森氏自身、「老害」と自虐していたが、私は森氏を老害とする指摘にもNOという立場だ。年齢を重ねるごとに価値観を変えるのは難しくなるかもしれない。それでも周りにイエスマンを置かないようにして、自省を繰り返し変わっていく中・高齢者もいるし、私はそういう人を心から尊敬している。自分が権力を持ち始めたら一番にやるべきことは「自分にNOと言える人に周りにいてもらう」ことだろう。そういう環境をつくらないことは、いつか自分の首を絞めるということだ。