「ダイブ」をして、佐賀県で市長になってほしい

―― 私も地方出身者です。静岡県の清水東高校というところを卒業したのですが、育った町は富士川のほとりです。自然も歴史も溢れたいい場所ですが、やはり働くには東京に行くしかないという雰囲気が……非常に寂しいんです。「私はここで育った」という思いと、帰省しても2、3日すると東京に帰って「社会人に戻る」というような不自然さを感じていて。日本全体の、地方創生に関わる問題だと思います

佐賀県知事 私も2年前までは東京の池尻大橋に住んでいましたが、今は佐賀のほうが圧倒的に楽しいですよ。都市的な遊びがしたいのだったら(福岡の)天神だってすぐですし、東京だって飛行機に乗ればすぐです。でも、この楽しさは佐賀の人はなかなか気づかないかもしれない。

―― 都市的なところもあり、地方の良さもある。

佐賀県知事 普段暮らすには、春夏秋冬がきっちりあって、朝はキリッと寒くて。そういうのが人間的だと思いませんか。とくに子育てに関して考えたりするときには。食べ物はおいしいし、自然が豊かで、満員電車はないし、渋滞はないし。家族全員が楽しいと思っています。

―― 都会に住む「元地方出身者」は、みんなその事実を知っているんですけれどね。

佐賀県知事 私はね、「ダイブのすすめ」だと思っているのですよ

―― ダイブとは、Dive=飛び込む ですか?

佐賀県知事 そう。飛び込むの。マッチョマインドな上司がいて辛かったり、残業が多くて困っているんだったら、ダイブしようぜ!って(笑)。ダイブしないでひとつの企業にしがみついているから悩みも多いわけで、一回ダイブしてしまえば、また何か新しいことが見えてきます。私はこれまで、何度もダイブしてきた。「総務省でしっかりやっているのに、なぜ逆境だらけの中で知事選挙に出るのか?」とよく言われましたよ。

「東京より圧倒的に佐賀県に暮らしていて楽しい。みなさんも“ダイブ”マインドで佐賀県に来て働きませんか?」(佐賀県・山口知事)
「東京より圧倒的に佐賀県に暮らしていて楽しい。みなさんも“ダイブ”マインドで佐賀県に来て働きませんか?」(佐賀県・山口知事)

―― 自信やグランドプランがあったからダイブできたんですよね?

佐賀県知事 佐賀県の人たちが、一緒にやろう、⽴候補してほしいと言ってくださったので、それは私にとってとてもいいダイブの仕方だなと思ったのです。ダメならダメで、また別の人生があるのだし。

―― そういう方が佐賀県中に増えていったら、大きなパワーになりますね。

佐賀県知事 だから、いつも言っているのですよ。「県職員もダイブして市長をやったり、県議会議員をやってもいいんだよ」って。「ダイブのすすめ」です。そのうち、羽生さんもダイブするのではないですか?

―― ダイブの爽快感は存じ上げています(笑)。私も4回転職していまして…。

佐賀県知事 私と同じ、ダイブ系じゃないですか(笑)。

―― 20~30代の頃は波もあって勢いでダイブすることもあると思うんですが、それより年齢も経験も積み重ねたものがある、山口知事のような方がダイブするのは、大人の器がないと、難しいです。

佐賀県知事 私も子どものころは保守的でした。でも、何回か苦しい経験があって、チャレンジしたほうが楽になるということがわかってきた。あのときもっと勇気があればとか、なんでこうしなかったのだろうとか、しなかったことに対する後悔はずっと残る。だから、「大人になってもダイブ」ですよ

―― リスクは怖くないですか?

佐賀県知事 もちろんダイブするときにはリスクを伴っているのです。けれども、じつは、ダイブした向こうはきれいな海原だったりする。ダイブするときは見えないから、岩がごつごつしていたりして死んじゃうかもしれないな、という恐怖もある。でも、結局ダイブせずにその場にとどまっているほうがリスクがあったりするでしょ。

―― 「ダイブしたけど失敗だった!」というときは、どうするんでしょうか。

佐賀県知事 修正して、修正でもおぼつかないときは、またダイブします。ダイブ癖がついてもいけないけど、そういう「次の一手」という考え方があるだけでもいいのではないかな。過労自殺が社会問題化していますが、「次の一手」が救いとなるかもしれないし。

―― 今は、20~30代の非正規雇用者が減らないどころか、増える勢いです。夢どころか、今後どこまで続けていけるんだろうという不安の方が大きい。私も20代の頃はずっと非正規雇用でした。パートタイムや、契約社員や、業務委託、フリーランス、ぜんぶ経験しました。そういった非正規雇用者と、最初から正社員として順調に働き始めた人たちとの間にある溝は本当に深い

佐賀県知事 悩んでる人たちを変えてあげてほしい。そういう人には佐賀県庁があるよ、と伝えてほしいですね。雇います、中途採用してますよ、と。無制限に遅くまで仕事があってもがいて苦しい人は、佐賀県庁に来ればいいのにな、と思っています。

―― 応募者が殺到してしまいますよ(笑)。「こういう人はダメ」といった条件は?

佐賀県知事 うーん、「もんだ症候群」の人はダメ。「こういうもんだから!」という、柔軟性のない人はダメです。でも、それ以外の柔軟でやる気のある方は、ぜひ佐賀県庁にダイブしにきてほしいですね。

―― お話しをありがとうございました。