東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長による日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会での発言が女性に対する差別だと批判されました。翌日の謝罪会見での言動も話題になっています。国内外でニュースになっているこの問題は、森会長個人だけでなく、日本社会に根深いジェンダーバイアスやホモソーシャリズム、それを容認してきた社会全体の問題なのではと、エッセイストの紫原明子さんは言います。女性と社会の関わり方について発信している紫原さんの緊急寄稿を掲載します。

元首相の不勉強な主張とさらに投下される突っ込みどころ

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長による「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という発言は問答無用の性差別だった。この後に続く展開を見ても、「(分を)わきまえた女性ならば入れてやる」と言わんばかりに、権力を笠に着た無根拠な主張が繰り広げられ、森氏は意思決定の場に女性が存在することをよほど疎ましく思っているのだということがうかがえる。

 もともと日本はジェンダーギャップ指数の順位が低い国として知られていたが、幸か不幸か本件によってこのジェンダーギャップ問題は、これ以上ない実例とともに、広く国内外に知られるところとなった。

 発言翌日の2月4日、森氏は「一般論として、女性の数だけを増やすのは考えものだということが言いたかった。女性を蔑視する意図はまったくない」(毎日新聞)と釈明をしたという。そもそも釈明というのは本意を説明して新たに理解を求めることを指すのだろうが、この場で釈明された内容を見る限り、残念ながら理解を示す余地が提示されたというよりは、新たな突っ込みどころが投下されたと受け取らざるを得ない

 JOCそのものが女性理事の割合を全体の40%以上となることを目指すという方向性を打ち出しており、また当然ながらそうなった背景には、意思決定の場における不平等なジェンダーバランスを是正しようという明確な目的があったはずであり、「一般論として女性の数だけを増やすというのは考えもの」という森氏の主張はその土台を自らぶち壊しにいっている。これはJOCのトップとしてあまりにも支離滅裂な態度だし、悪意があるにせよないにせよ、とんでもなく不勉強だ。

 けれども個人的に、釈明よりももっと気になったのは、次の言葉のほうだった。

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