育児を積極的に行う男性を支援し、男性の育児休業取得の促進や業務改善を図る企業を表彰する、厚生労働省主催の「イクメン企業アワード」。5回目となった2017年は、応募企業42社の中からソニー株式会社とヒューリック株式会社がグランプリを受賞しました。

 昨年10月24日に行われた「イクメン推進シンポジウム」では、授賞式に続いて受賞企業と有識者によるパネルディスカッションを開催。ソニー人事センターダイバーシティ開発部統括部長の大庭薫氏、少子化ジャーナリストで相模女子大客員教授の白河桃子氏らが登壇し、イクメンプロジェクト推進委員会委員を務める日経DUALの羽生祥子編集長の進行で、働き方改革の本質について話し合いました。その内容をお届けします。

男性社員の半数以上が育児休業を取得

羽生祥子編集長(以下、羽生) 今回、イクメン企業アワードのグランプリに選ばれたソニーの取り組みは非常にめざましく、またストーリー性もあると思っています。まずは大庭さん、取り組みの概要についてご紹介をお願いします。

大庭薫氏(以下、大庭)  ソニーグループは、AV機器や半導体といったエレクトロニクス事業をはじめ、ゲーム、ネットワーク、映画、金融、音楽といった多様なサービスを提供しています。今回受賞したソニー株式会社は主にエレクトロニクス事業と本社機能を含んだ組織となり、社員の約7割がエンジニアで、男性が8割以上を占めています。エンジニアの男性が働きやすい職場風土をつくることが、組織の課題の一つだと捉えています。

 男性の育児休業、育児参画に関する制度設計のコンセプトは、「職場から遠ざけず、働きながら育児ができる環境を拡充する」。その一環で2007年に導入したのが育児休暇制度です。育児休職を取らずに済むよう、20日間の有休を付与するというもので、主に男性が利用しています。

 育児休暇制度を導入してから、男性の育児休業取得率は大幅に上がりました。2015年、16年とコンスタントに50%以上の人が取得。うち6割が5日間以上休んでいます。中には4回取ったという管理職もいます。

「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」授賞式に続いてパネルディスカッションが行われた
「イクメン企業アワード」「イクボスアワード」授賞式に続いてパネルディスカッションが行われた

羽生 今回ソニーさんが高い評価を得たポイントの一つが、「育児休暇を取るのが普通のこと」という文化が浸透している点です。もともと規模が大きい企業ですから、配偶者が出産したという従業員だけでも1100人近く。そのうちの550人が取得し、うち85人は管理職だそうです。伝統ある大企業で若手社員だけでなく多くの管理職も休みを取っているところが、高い評価につながりました。

大庭 休みを取ることが当たり前の社風が生まれた背景は、1990年に遡ります。当社は製造事業所も抱えているため、それまではお盆の時期などに全社員が一律に休みを取っていました。

 それを、当時会長だった創業者の盛田昭夫が「これからの時代は各自の都合で自由に休める会社にしよう」と、誰もが連続2週間、好きなときに休暇を取れる「フレックスホリデー制度」を導入。業務の属人化をなくし、他のチームメンバーにしっかり業務を分担したり、引き継ぎをしたりして、仕事がまわるようなしくみができました。