それぞれの職場に合った改革を自ら考え、実践する

羽生 では続いて、男性の育児休業取得に焦点を当ててソニーの取り組みを伺っていきます。2007年に始まったということで、かなり早いタイミングだったと思うのですが、きっかけがあったのでしょうか。

大庭 女性活躍推進についての社員主導のプロジェクトがその2年前に始まり、その中で「女性がもっと働きやすい環境を作るには、男性も育児休業を取ったほうがいい」という声があがったのがきっかけです。

日経DUALの羽生祥子編集長が司会を務めた
日経DUALの羽生祥子編集長が司会を務めた

羽生 取り組みを始めて10年、現在は両立支援のシステムや社風は定着しているのでしょうか。

大庭 先ほど紹介いただいた「男性も育児をするのが当たり前」という風土は醸成されていますが、職場によってはそうでもないところもまだあります。

 おそらく40代後半から50代くらいのマネジメントクラスに男女の役割分業意識が残っている人がいて、無意識のうちに「育児はやっぱり女性の仕事だよね」というのが態度に出てしまうんですね。

 そのため、女性の育成プログラムや男性の育児参加を推奨するミーティングなど、当事者を対象にするプログラムを行うときには必ず上司に向けてもセットで実施しています。そういうところで強調しているのが、「無意識のバイアス」です。

 例えば、男性の上司はみんな「うちの会社で男女を差別している人なんていないし、今更こんな研修受けなくてもいいんじゃないの」と言います。そこで、無意識のバイアスについてまず理論を説明した後、6人くらいのグループワークで、普段どんな行動をしているかを互いに話してもらう。すると、「それ、実は僕もやっていた」というような気づきが出てきます。

羽生 ソニーさんは「全社一律」をあまりよしとせず、部署ごとに改革をしているそうですね。先ほどお話にあった「じかんプロジェクト」については、「ソニーらしい働き方」ということをキーワードに掲げていらっしゃいます。一言で言うとどんなことでしょうか。

大庭 当社はもともと自由闊達な社風なので、職場単位で自分たちにとって「なぜそれが必要なのか」が腹落ちしないとなかなか前に進みません。会社からの押し付けで「○時に帰りなさい」というよりは、「その日は遅くなっても、年間を通して労働時間が短くなればいいし、それぞれの職場に合わせたやり方を考えてやってください」ということです。