オランダに来てから変わった子どもへの態度

吉田 ところで、私自身、オランダに来てから、子どもに対する態度がよりフラットになったと感じているんですが、ミッシェルさんは、オランダに来てから子どもへの態度って何か変わりましたか?

ミッシェル そうですね。私はイギリス的なママというか、子どもには学校でもっと良い成績を取らせて、もっと頑張らせることこそが、将来の幸せにつながると思っていました。そういう感じがオランダに来てからすっかりなくなったと自分でも思っています。

 典型的なオランダ流子育てのポイントを彼らに聞いてみた。

 「物事を全体的に捉えて、前向きに子育てをするということかしら。私は必ずしも賛成はしないけれど、『ダメ・してはいけません』という否定的な言葉を避けるのもオランダ人らしい子育ての一つかもしれないわ。親は『●●しないように気をつけてくれる?』という言い方をすることで、子どもに物事を押しつけるのではなく、理由を話して聞かせ、納得させる傾向があるかもしれない」とヘレーンは答えた。

 「親と子の対立は避けるべきことだと考えられているんだよ。親が子どもと徹底的に話し合うことで対立は避けられるけど、同時に親としてあらゆる反論を受け入れなければいけないことも意味する」とトーマスは付け加えた。

 「親たちは上手く対処していると思うけどね。結局は『それはいいね』と言うのだから、子どもが何をしていようと本当は関係ないんだけどね」

(『世界一幸せな子どもに親がしていること』P176~177より)

吉田 ミッシェルさんはオランダの方と結婚しているので、子どもにプレッシャーを一切かけずに自由にのびのびとした学校生活を送らせることをよく理解していたのではないんですか?

ミッシェル そうなんだけど…。夫はイギリスのスタイルが好きだったのよね。面白いことにオランダの人って自分の国が良い!って言わないでしょ? 彼の場合もオランダの子育ては良い!って思ってなかったんじゃないかしら。

吉田 なるほど。そういうところ、ありますよね。

取材後記
 インタビュー中、ミッシェルさんが「子育てをする上でプレッシャーが少ない」「子どもが失敗をいっぱいすることを社会が認めている」と強調していたことが印象的でした。わが家は移住して以来、ミッシェルさんのようにすっかりオランダスタイルになりつつあります。最近、次男が高熱で寝込んでいたんですが、病院に連れて行ってもどうせ「寝てなさい」と言われるだけだと経験的に知っていたので、しばらく連れていきませんでした。でも数日後に次男の4歳の誕生日があり、親としてはそこまでに元気になってほしく、見るに見かねて病院に連れて行きました。そしてやっぱり検査は全くなく「インフルエンザだね、もうちょっと寝てるしかないね~」と。オランダでは「寝てなさい。熱が下がったら学校行きなさい」だけ。薬も一切出ません。幼稚園も「治ったらお祝いに来ていいから!」という感じ。もちろん、子どもの看病のために仕事を休んでも誰も何も言いません。子どもに対して社会がおおらかなんだなと思った出来事でした。病気が治らないと困りますが、ミッシェルさんの言う、オランダは子育てする親が非常に精神的に楽だということを実感する日々です。もう日本には戻れなさそうで怖いですが…。
(1月22日発売、1600円+税、日経BP社発行、日経BPマーケティング発売、384ページ)
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『世界一幸せな子どもに親がしていること』

 塾通いも、習い事も、宿題もなし! それなのにどうしてオランダでは賢い子どもに育つの? オランダの子どもは世界一幸せ――。ユニセフが実施した子どもの幸福度調査で、オランダは1位になった。実際、オランダでは、アメリカ、イギリス、日本では信じられないような子育ての光景がある。
 オランダ人の夫と結婚してオランダで子育てをするアメリカ人のリナ、イギリス人のミッシェルという2人の著者は、その違いを体感し、驚き、オランダメソッドを徹底的に調べ始める。

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吉田和充
東京都出身で、現在は家族とオランダ在住。経営戦略、広報広告戦略の立案、実施、プロデュース、商品開発、新規事業立ち上げ、海外進出プロデュースなどを手掛ける「SODACHI」、「スタイラ東京」、WEB制作の「Neuromagic Amsterdam」を運営。保育士の資格も持つ。http://otoyon.com/