吉田 ルールを守ることを大事にするという点ではイギリスと日本は似ているかもしれません。日本の場合は家庭内のルールはもちろん、社会や学校においてもルールを厳しく守ることが要求されます。良い面は当然あるんですが、もしかしたらルールを守ることを重視し過ぎているうちに「ルールさえ守ればよい」となってしまって、日本の子どもたちは「自分で考える」ということをしなくなってしまっている気もします。

ミッシェル オランダでは、みんな自由に考え自由にいろんなことを始める、いわゆる起業家タイプが多いのよね。子ども時代から自由に、たとえ間違っていても失敗しても、どんどん自分で進めていける感じとか、それを評価する社会があって、その中で育っているからなんでしょうね。本当は、なんかもうちょっと考えたら?とか思うこともあるんだけど…(笑)。

吉田 そこはオランダの良さというか、子育てをするうえで、子どもにとっては楽しい、親にとっては楽、となっている大切な要素な気がします。

 学業達成度をはかる10段階評価やABC評価とは違い、息子の成績表には、社交能力や個性に重きをおいた5項目評価が記されていた。私は、今まで自分が信じていた確固たる価値観とのギャップに直面した。なぜ社交能力が頭の良いことよりも大事なの!?

 この5項目評価は、子どもたちが小学校に通う間ずっと続いた。それぞれの評価項目を見て、子どもがどうやって特別な技術を身につけ、ほかの人と一緒に作業をし、計画し、失敗があったときにどのように処理しているかなどの概要をつかむことはできた。

(『世界一幸せな子どもに親がしていること』P135より)

天気と出産だけはちょっと…

吉田 自分が子どもだったら「ここで子ども時代を過ごしたかった!」と思うようなことばかりなんですが、ミッシェルさんにとって、逆に今だにこれだけは「ない」ということってありますか?

ミッシェル 私も、オランダの子育てはかなりポジティブに捉えていて、あまりネガティブなことはないんです。天気以外は(笑)。ただ一つだけ、あえて「これはどうかな?」と思うのは出産に関してでしょうか。知っての通り、オランダでは自宅出産を推奨しているのよね。

吉田 はい。聞きますね。実際に日本人でトライした人も周りにいます。

ミッシェル 私の場合は、助産師さんが立ち会いの産科での出産だったけど、自宅出産と同じような状況だったの。まあ、これだけは本当は全く必要のない、あまりポジティブなエピソードではなかったから、書籍ではカットされちゃったんだけど。そのときはまだ、オランダ人になりきれてなかったですし。

 助産師さんが、私が陣痛で大変な思いをしているときに、「熱いお茶がいい?」「冷たいお茶がいいかしら?」とか「マッサージ?」とか色々聞いてくれるんだけど、私は「そんなことどうでもいいから、早く産ませてちょうだい!」って、ずっと思っていたから。

吉田 最近では、オランダでも自宅出産の割合は減ってきているみたいですね。

ミッシェル そうですね。自宅出産を計画していても、最終的に病院で産むというパターンが多いようです。結果的に私もそうだったんですが。

吉田 じゃあ、ミッシェルさんも自宅出産を希望していたんですね。

ミッシェル 違うの、私は希望はしていなかったのよ。でも、助産師さんに「オランダでは、みんなそうしてるから」って言われたから…。

学校の誕生日パーティーで劇を披露する子どもたち
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