世界中で大きな反響を呼んだことについては、

 「『日本のガバナ―(知事)が凄いことをやっているぞ!』とアシュトン・カッチャーがSNSで拡散してくれたり、香港で歩いていると、『あっ、あの動画に出ていた知事だ』と気付かれて、お腹を抱えるポーズを真似されたり・・・こんな風に世界を駆け巡るSNSってすごいなって。」

 「知事が妊婦に。」という、一見コミカルにも受け取られかねない動画出演に当たり、3人の知事の間ではある約束が交わされていたといいます。

 「子どもを産むという事は大変なこと。それを伝えるために、真剣にやるんだ。茶化しちゃいけない。まっすぐに、作り込んだりせずに、自分たちが思った通りにやってみよう。と3人で申し合わせたんです。」

 そして、自身の体験を振り返りながら、

 「(体験する前は)子育ては子どもが生まれてから始まると思っていたんです。おなかの中に子どもがいるときの女性の苦労に全く意識が向いていなくて・・・。でも、生まれる前の“マイナス1歳”から、子育ては始まっているんだと今回よくわかりました。」

 これには、1児の母である眞鍋かをりさんをはじめ、会場のお母さんも共感した様子でした。

現在2歳のお子さんを育てながら仕事と両立させている眞鍋かをりさん。「頑張っていない自分には価値がないと思い込んでいたときもありましたね」
現在2歳のお子さんを育てながら仕事と両立させている眞鍋かをりさん。「頑張っていない自分には価値がないと思い込んでいたときもありましたね」

イクメン疲れは不健全。それぞれの家庭のペースがあっていい

 2015年に第一子を出産した眞鍋さん。2カ月半で仕事復帰を果たし、日経DUALの連載もスタート。当時は授乳しながらスマホで原稿を書いていたと当時を振り返りました。

 羽生編集長からも「いいね!がたくさん付く、人気コンテンツ」と太鼓判を押される眞鍋さんの連載。人気の秘密は「無理なことは諦めていいよ、大丈夫だよとズバッと言ってくださること」

 そんな眞鍋さんが、最近気になっているのが「イクメン」という存在。

 「『今はイクメンの時代だよね』みたいにイクメンの流れになっていくのは凄くいいことだと思うけど、イクメンってこういうものってなってしまうと、男性たちがイクメンブルーになってしまうのではないかな。イクメンってウェブで検索すると第2検索ワードに「疲れた」って出てくる。これって、すごく不健全だなっていう思いがあるんです。」

 これには知事も賛同。

 「イクメンって言葉が流行ると『こうしなくてはいけない』となってしまい、『あなたはこの通りにやってくれていない』と、相手を責めるようになりかねない。本当は子育てって、話し合いながら、いろんな楽しさを見つけていく作業であるはずなのに、“ここに書いてあるんだから、もうちょっと育児に参加しなければいけない”と思ってしまうのは不幸ですよね。」

 言葉やイメージばかりが先走ってしまうのは、何もイクメンばかりではないと、眞鍋さんは会場にいる働くお母さんにも語り掛けました。

 「働くお母さんが注目されている今、“フルタイムで働いて、朝5時に起きて子どものお弁当も作ってそしてずっとキレイでいます”っていうママがいたら、かっこいいって憧れる。でも、自分にあてはめられると“キツイ”って思う。人にはキャパシティもあるし、得意不得意もあるし。イクメンもワーキングマザーも同じで、こうあるべきって当てはめるのは良くないんです」

「できない自分には価値がない」と落ち込んだ日々・・・

 眞鍋さんの育児について聞いてみると、かつては落ち込んだこともあったそうです。

 「子どもを育てるのって、仕事をしてきた自分と求められる能力が全く違う。できないことだらけで、挫折するんです。例えば、子どもに泣かれて料理を中断することにも慣れていなかったから『私はコールスローひとつ作れない女だったのか・・・』と挫折したり。普通の生活なんて送れるようにならないんじゃないかなって思ったり。これって働いてきた女性や、責任感に強い長女にありがちだと思うんですけど“できない自分、がんばっていない自分には価値がない”って思いすぎちゃうんです」

 出産直後から、両親が育児に協力的だったそうですが、眞鍋さんの中には葛藤があったそうです。

 「母が手伝ってくれるって言っても『もっと世間には大変な人がいる』『近くに両親がいない人はもっとがんばっている』って、断っていたんです。これもきっと、完ぺき主義な人ほど陥りやすいんでしょうね。」

 そんな眞鍋さんの体験談を聞いた日経DUALの羽生編集長は

「それって、凄いワーキングママばかり取り上げてきたDUALも原因かもしれないって思ったので、ママたちの罪悪感を解かなくちゃという思いから、いわゆる“ダメママ”も取り上げたんです。日経DUALの編集部員の中から(笑)。手抜きレシピを大恥ずかしの大公開。そうしたら人気コラムになったんです。」

 すると、知事からこんな一言が・・・。

「『もんだ症候群』だよね?」