2015年8月に生まれた株式会社「RICCI EVERYDAY」(リッチー・エブリデイ)。アフリカンプリントのバッグが人気を集めるとともに、ウガンダで製造プロセスに関わる女性たちの支援にもつながると、今注目を浴びています。前半「銀行員から一転 ウガンダで起業し、バッグを販売」では、創業者の仲本千津さんが、アフリカで単身起業するに至ったキャリアについて伺いました。

後半は、専業主婦だった母と共同経営する楽しさや、ウガンダの厳しいシングルマザー事情について。このビジネスを通じて千津さんが感じる「働くということの意味」について伺っていきます。

伊勢丹に体当たり営業。専業主婦だった母が生き生きと変わった

「RICCI EVERYDAY」の創業者、仲本千津さんと、母であり日本法人取締役の仲本律枝さん。「母は専業主婦でしたが、コミュニケーション能力もマルチタスク能力も高い人。だから仕事も絶対できると思った」
「RICCI EVERYDAY」の創業者、仲本千津さんと、母であり日本法人取締役の仲本律枝さん。「母は専業主婦でしたが、コミュニケーション能力もマルチタスク能力も高い人。だから仕事も絶対できると思った」

日経 DUAL編集部(以下、――) RICCI EVERYDAYのバッグは、アフリカンプリントの魅力を日本の人たちにも知ってほしいという思いから生まれています。試作の段階から、出来上がるとすぐに日本に送っていたのですね。日本での宣伝活動を行っていたのが、仲本さんのお母様だったと伺いました。

仲本千津さん(以下、仲本) ええ、私はウガンダに拠点を置いていましたので、日本に広めたくても販売をしてくれる人が誰もいなくて。最初は、在庫を日本に送る先として実家を選び、母には発送業務をしたり、展示会や販売会で店頭に立ったりしてくれないかな、という軽い気持ちだったのですが……。でもある日、母が独断で静岡伊勢丹に営業に行ったと聞いてびっくり。しかもノーアポだったんです(笑)! 母には驚かされました。

―― それはすごいですよね。大手百貨店がアポイントもなく、起業したばかりの会社の商品の取り扱いを検討してくれる、というのはなかなかないことだと思います。

仲本 ファッション業界のことを何も知らないからできることですよね(笑)。インフォメーションセンターの方にバッグを見せて、取り扱いをしてもらえないか聞いたらしいのです。普通では考えられませんが、その方がとてもいい方で、バイヤーさんにつないでくださって。そして気に入ってもらえて、期間限定の展示販売ができたんです。そのときの売れ行きもよくて、多くの人に知っていただくことができ、ブランドとしていいスタートが切れました。

―― お母様の行動力に感謝ですね。

仲本 母は専業主婦でしたが、4人の子どもを育てながら、地域の活動にも積極的に参加していたせいか、コミュニケーション能力もマルチタスク能力もすごく高い人でした。だから、仕事も絶対できると思ったんです。今では、販売、展示会、取材対応、ラジオの出演まであらゆることをこなしてくれています。母の生活はガラリと変わりましたが、60年間の人生でやったことがないことを新鮮な気持ちで楽しんでくれている。思ってもなかったことですが、新しい世界を一緒に見られていることは、とても楽しいことだな、と母にはとても感謝していますね。