2018年1月に出版された『すずちゃんののうみそ』(岩崎書店)は、静岡県三島市で自閉症がある子どもを育てる竹山美奈子さんが書いた絵本です。2018年12月には台湾でも出版されるなど話題を集める中、竹山さんにこの絵本を書いたきっかけや、絵本に込めた思い、出版後の反響、自閉症の子どもを持つ親御さんだけでなく、生きづらさを感じる人や、子どもたちに伝えたい思いなどを聞きました。
上下編の2回でお届けします。

保育園の子どもたちは、ASDのわが子に自然に接してくれた

── 『すずちゃんののうみそ』は副題に「自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんの、ママからのおてがみ」とある通り、自閉症スペクトラムを扱った絵本でもあります。この本を出したきっかけは何でしたか?

竹山美奈子さん(以下、敬称略) 今、静岡県立沼津特別支援学校小学部3年の娘、鈴乃が通っていた公立保育園のお友達に、卒園に当たってお礼の気持ちを伝えたいと思ったことがきっかけです。保育園卒園後はバスで約40分かかる隣の市の特別支援学校に通うことが決まっていたため、保育園のお友達には会えなくなる。それなら卒園のタイミングでお礼を伝えたいと思ったんです。

── 「すずちゃんのクラスメート」である子どもたちに、お礼を伝えたかったということなのですね。

竹山  正社員として長く働いてきていた私にとって、育休後すぐに子どもを保育園に預けて職場に復帰するのは当たり前のことでした。ただし、娘がASDという障害があるかもしれないと気づき、「どこに預ければ本人にとっていいのか」に悩んでしまって。障害児のための療育保育園は民間ではあったのですが空きがなく、公立では親子通所の療育があるだけで、療育保育園に預けることはできませんでした。それだと正社員として仕事に復帰するのが難しかったので、市役所に相談したら、公立保育園はどこも障害児の受け入れをしていることが分かりました。

── なるほど、それで公立保育園に入園したのですね。

竹山 重度の知的障害と自閉症がある娘に対し、子どもたちは、とても自然に接してくれました。好奇心旺盛で、すずちゃんは自分とは何か違うけれど、仲良くしたい。そのためにはどうしたらいいかということを、私にどんどん質問してくれました。

 例えば、お迎えのときに「すずちゃんは年長さんになってもなぜ話せないの?」「年長さんなのになぜ自分で靴が履けないの?」と、本当に他意なく質問してくる。それに対し、「すずちゃんは生まれた時から、ゆっくり育つ病気みたいなものでね。でも病気みたいに薬がないから、みんなよりだいぶ長い時間、ゆっくり訓練しないとできるようにならないって、お医者さんに言われちゃったんだよね」と私が話すと、「そうなんだ! すずちゃんママも毎日大変だね。頑張ってね!」と励ましてくれて。

── すずちゃんの障害を子どもたちは、どう捉えていたのでしょうか?

竹山 日々の生活の中で自然に察知してくれて「こういうときは、こうしよう」というように理解して行動してくれることが数多くありました。

 例えば、娘は気圧の変化が苦手で、雨が降ったり台風が近づいたりすると、泣いたり叫んだりかんしゃくを起こしたりしてしまうことがあるのですが、それは自閉症が脳の障害だから気圧の変化が苦手だという理由があるんですね。私たち家族や専門家はそれを知識として知っていますが、子どもたちは毎日過ごす中で、よく観察することで感じるようになったのでしょう。だから、雨の日のお迎えの時には「すずちゃんママ、今日すずちゃん大暴れで大変だったんだよ~」という、先生方からは伺えないような日常の様子も教えてくれて、しかも、「でもしょうがないよね、雨、苦手だもんね」と、その原因にも理解を示してくれる。

 そんな日々の子どもたちとの会話が、とても心地よくて、楽しかったんです。

鈴乃ちゃんは現在、静岡県立沼津特別支援学校小学部3年生