羽生 そして、現在は10点まで下降しています。年商7億円で事業が好調な今、なぜ10点なのでしょうか?

荻野 自分自身を見失ったというのでしょうか。ブームになったおかげで注目していただけたのですが、事業がうまくいく反面、女性経営者というフィルターで見られるようになります。次第に、働きながら活躍するお母さんを演じるようになってしまいました。本当はシンプルな暮らしが好きなのに、丁寧で上質な暮らしを求められるようになって、例えば、自宅取材が入るから「こんな茶碗じゃだめだ、買い替えなきゃ」とか繰り返しているうちに、自分ってなんだったんだろうって、よく分からなくなってしまった。着ぐるみを着ているつもりが、チャックがどこにあるかも分からなくなった。今はいったん全部をリセットしている状態ですね

風通しのいいコミュニケーションができる場を皆でつくっていきたい

羽生 ありがとうございました。それではお三方に、日経xwomanに期待することを一言ずついただけますか。

田中 私は今40歳ですが、40歳になった時に急に年を取った気がしたんです。この先どうやってキャリアを育てていけばいいだろう、とかすごく漠然とした不安はあります。なので、日経ARIAには、そんな私たちを勇気づける発信をしていただきたいなと思います。そして、日経doorsには20代、30代前半の女性を応援してもらいたいですし、私自身もお力になれることがあればぜひ協力したいです。

荻野 少し先に同じような壁に向き合ってきた女性たちがいる―—それについて読めるサイトは、今までなかったなと本当に思います。私もできるだけ自分自身をさらけ出したいと思いますし、皆さんもどんどんコメントしてもらって「こんな発言してもいいんだ」と感じられる、風通しのいいコミュニケーションができる場を皆でつくっていけるといいなと思っています

正能 「自分らしく生きる」「自分らしく働く」と言っても、ある日突然アイデアが浮かんでくるわけではなくて、他の働いている女性のいいなと思ったところや考え方をちょっとずつまねっこして、自分なりにカスタマイズした結果として、自分らしく働く、自分らしく生きる、がかなうのかなと思います。そういう意味で、それぞれの世代のそれぞれの考え方を知ることができる、このような場ができることがとてもうれしいし、いいことだなと思います。私も書きたいし、私も読みたいです。できれば自分の親世代にも読んでもらって、元気になってもらえたらいいなと思いました。

羽生 ありがとうございました!

荻野みどり さん
ブラウンシュガーファースト代表取締役社長
1982年生まれ。2011年の震災直後に第一子を出産。「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に食材を厳選したお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」をファーマーズマーケットで立ち上げ。2013年に有機エキストラバージンココナッツオイルを発売し、ブームの立役者としてメディアから注目を集める。また、商売を通して子どもたちの未来に「心豊かな食環境」をつなぐことをテーマにフードロスを解決する事業や、母乳の質を分析して改善する事業などを立ち上げている。「0→1のブランディング」や「お母さんの夢の叶え方」をテーマに大学や経済フォーラムなどで講演もしている。著書に『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』(集英社)。
正能茉優 さん
ハピキラFACTORY代表取締役社長 兼 ソニーモバイルコミュニケーションズ正社員
1991年生まれ。慶應義塾大学在学中、地方の商材をかわいくプロデュースし発信するハピキラFACTORYを創業。大学卒業後は、広告代理店に就職。現在は、ソニーにてスマートプロダクトに携わりながら、自社の経営も行う「パラレルキャリア女子」。その「副業」という働き方の経験を生かし、2016年度には、経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」の委員にも。最近は、慶應義塾大学大学院特任助教として、学生たちと「地域における新事業創造」について活動中。
田中美和 さん
Waris共同代表
1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現 日経BP)入社。編集記者として雑誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス/複業/女性のキャリア/ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。2018年に出産し1児の母。

(取材・構成/日経DUAL編集部 小林浩子 写真/稲垣純也)