羽生 そして、出産で100点まで上がったのですね! その後、つまり現在は下降気味な感じでしょうか。

田中 表現が難しいのですが、ハッピーとアンハッピーが同時に来ましたね。子どもはかわいくて、とても満たされているけれども、子育ては初めてなので分からないことが多くて不安もあります。例えば、子どもが生後2カ月から預けて働いていますが、こんな小さいうちから預けて働いていいのかな、そばにいたほうがいいのかな、など一つひとつ立ち止まってモヤモヤしています。

羽生 日経DUALの片野編集長、いかがでしょう?

片野編集長(以下、片野) この時期が肝心なんです。上がるか下がるかの分岐点。詳しくは日経DUALを読んでいただけるとうれしいですが(笑)。

田中 いつも参考にしております! 

片野 出産前後の大変な時期を、夫婦で力を合わせて乗り越えていけるかが大事なポイントです。それができた家庭は、その先も下がらずにまっすぐ進むか上向きになり、子育ても楽しみながら仕事との両立生活をしていけると思うのですが、例えばここで夫が協力しなかったりすると……“熟年離婚まっしぐら”みたいな未来もあり得るわけです。

田中 わが家はDUAL世代的というのか、夫が「ヘルプ」という気持ちではなくて「がっつりシェア」という姿勢で育児も家事もしてくれています。シェアという気持ちがあるから、うまくいっているのかなと思います。家事代行の方にも週1ぐらいで来てもらっていますし、気が付けば、独身時代より家事をしていません。こんなに楽になれるんだという発見がありましたね。

片野 働く時間についてはどうでしょうか。

田中 私はとにかく仕事が好きで、寝る直前まで仕事をしていても苦じゃないタイプなんですが、子どもと向き合う時間をつくるために、時間に対する切実さが変わりました。働く時間はメリハリを付けられるものだなというのも、子どもを持ったことによる新しい発見でしたね。

「家を飛び出して心の中が解放感に満ちあふれた時が100点」

羽生 次は、年齢はお若いですが、さまざまな人生経験が豊富な、ブラウンシュガーファースト代表取締役社長の荻野みどりさんの、人生折れ線グラフを見てみましょう。

荻野みどりさん(以下、荻野) 2011年の震災直後に出産し、「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に食材を厳選したお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」をファーマーズマーケットで立ち上げました。30年後の食文化をつくるのは今の私たちの仕事だと思い、さまざまな事業を手掛けています。

 
荻野みどりさん (ブラウンシュガーファースト代表取締役社長)
荻野みどりさん (ブラウンシュガーファースト代表取締役社長)

羽生 荻野さんのグラフは竹を割ったような感じですが、20歳で家出した時が100点! 詳しく教えてください。

荻野 私は福岡出身ですが、「25歳になったら結婚しろ」というような保守的な両親で……。「留学したい」といっても「必要ない」と、議論も始まらない感じ。それならと、家を飛び出して心の中が解放感に満ちあふれた時が100点です。

羽生 それで結婚を経て、もう1回100点に上がるのが離婚した時なのですね?

荻野 家を出たとはいえ「お見合いしろ」「早く帰ってこい」というプレッシャーが強くて、「私は幸せなんで大丈夫です」と断り続けていたのですが、当時付き合っていた相手と「結婚しないなら戻ってこいと言われている」という話をしていたら、結婚することになりました。ただ、「結婚というのは、お互いが努力して、ラッキーだったら終わりまで続く話で、私は結婚ということを重要視していないから」という私の思いは、初めから元夫に伝えていました(会場ややどよめく)。

羽生 (会場に向かって)ウェブ上に5月からできる予定の、読者参加型フォーラム「Terrace」では毎日、こんな感じの話題が繰り広げられると思いますので、皆さんには楽しみにしていただきたいと思います。

さて、荻野さん、そして離婚を経て、事業が加速したのが30代ですね。

荻野 おかげさまで子どもを授かり、とても協力的な夫でした。離婚した今も、娘に対しては、父親と母親という役割は変わっておらず、元夫とはとてもいい関係性なんです。私が仕事の時は、元夫はもちろん、元義理の両親も娘を預かってくれます。家族みんなが、娘を思う気持ちでキュッと集まって編成し直した感じです。