ヒブと肺炎球菌の定期接種化で多くの赤ちゃんの命が救われることになった

 2013年から定期接種化されたヒブと肺炎球菌は日本の小児科医が長年、導入に向けて活動していたワクチンでした。

 ヒブ感染症も肺炎球菌感染症も赤ちゃんがかかってしまうと重症化しやすい病気です。髄膜炎になったり、後遺症があったり、亡くなることもあります。「これらのワクチンが定期接種になるまでは、重症化する赤ちゃんが1年間に600~700人もいました。しかしここ3年間での重症例は、ヒブ感染症はゼロ、肺炎球菌感染症でも7割減になっています」(峯先生)

 「日本は医療レベルが高いので、諸外国に比べて病気で亡くなる子は少ないです。しかし、病気が重症化してしまうと、やはり一定の確率で亡くなる子も出てしまいいます。ヒブ、肺炎球菌のワクチンもあと15年早く定期接種化されていれば、どれだけの子の命が救えたか。そんな思いが私たち小児科医にはあります」(峯先生)

 子どもが夜中に高熱を出してあわてて救急診療に受診する、という経験がある人もいるかもしれませんが、「ヒブと肺炎球菌のワクチンを接種していれば、夜中に発熱をしても、この病気を疑う必要はほぼなくなりました。小児科医は『朝まで様子を見てから受診してください』と自信を持って言うこともできるようになったのです」。ワクチンは保護者、医療関係者双方の負担を減らすことにもつながっています。

接種時期は抵抗力をしっかりつけるために逆算して決められている

 冒頭で述べたように、標準的なスケジュールでは赤ちゃんは生後2カ月から予防接種を開始します。ヒブと肺炎球菌は2カ月、3カ月、4カ月で1回ずつ、さらにヒブは12~18カ月で1回、肺炎球菌は12~15カ月で1回の追加接種をします。計4回も、しかも生後2カ月という低月齢でスタートしなければならないのはなぜなのでしょうか。

 「どちらの病気も生後5カ月ごろにかかる子が増えてきます。重症化しやすいことを考えると絶対に予防したい病気ですから、その前にしっかりと免疫をつけておきたい。となると、逆算して、生後2カ月から接種を開始しないと間に合いません」(峯先生)

 「ヒブも肺炎球菌も病原体の一部を接種する『不活化』ワクチンなので、しっかりと免疫力をつけるには、複数回の接種が必要です。生後2~4カ月の接種でいったんついた免疫力は、数カ月たつと、落ちてきてしまいます。そこでもう一度接種することが必要となります。これが1歳過ぎで行う追加接種です。追加接種によって十分な免疫力が保たれるのです」(峯先生)

 予防接種に行こうと思っていても赤ちゃんが風邪をひいてしまうなど、スケジュール通りに進まないこともあります。

 「スタートが遅れてしまったり、うっかり忘れてしまうなど、途中で受けられないことがあっても、気が付いた時点で予防接種をすれば、キャッチアップできます。定期接種の期間内であれば無料で接種できますから、心配せずに、かかりつけ医に相談してみてください」(峯先生)

うっかり忘れたり、風邪をひいても、気付いた時点で接種すればキャッチアップできる(イメージカット)
うっかり忘れたり、風邪をひいても、気付いた時点で接種すればキャッチアップできる(イメージカット)