食べる人に思いを込め、気持ちを想像しながら料理をする
さらに志村さんが提案したのは、このオーダーを自分たちで作るのではなく、他のチームとシャッフルすること。「各チームで1つ、オーダーを選んでください。そして、そのオーダーを書いたチームの人たちが、いったいどんな気持ちでこのごはんを食べたいと思ったのか、それを想像しながら料理してほしいのです」(志村さん)
参加者たちは、使う食材を選ぶために、今度は境内に置かれた軽トラックを囲みます。ここに積まれた食材が、今日の材料のすべて。作りたいメニューの内容に合う食材があるとは限りません。「里芋がないからジャガイモで…」「色のインパクトも欲しいからたくあんを使おう」など、話し合いながら食材がピックアップされていきます。
料理も屋外で行います。コンロとまな板、包丁が用意され、各グループで準備開始。その中には、料理が得意な人もいれば、ほとんど料理をしたことのない人もいます。ここで「メニュー名よりキャッチフレーズが大切」だったことが生かされます。コロッケ、肉じゃがなどの名称が優先だと、どうしてもそれを作ったことがある人や料理が得意な人が先に立ってしまいます。
そうではなく、最終目的は「食べた人にこう感じてもらいたい」という気持ちなので、そこに向かって全員が動くことになります。「僕は火の番をする」「私はこれを洗ってきます」そうした役割を自然と自分たちで見つけていくことになり、全員がそれぞれ、何かしらの役割を持ち、食べてもらう人を思って調理する時間となりました。
さっきまで知らない同士だったとは思えないほど、話が弾んでいます。それはどんなものが出来上がるかドキドキするからこそ。思い通りにいかないハプニングもあります。とにかく自分たちでなんとかしようという思いが人と人を結びつけます。
「じんわり透き通る青菜とサツマイモのあったかおかゆ」を作っていたチームの一人は、野菜を星形に切っていました。「オーダーの紙には、キラキラ模様も書いてあって、こういう気分になりたいんだなと思って。普段の私ならしないけど、これが食べたいと思っている人のために切っています」と話していました。